第40話 デートの思い出
「春ちゃん……」
りょうたが私に声をかけてくれるが、私はわざと返事をしない。帰りの電車に乗り、電車からバスに乗り換えてしばらく、薄暗い田舎道を進むバスに乗り景色を眺めていた私は、隣に座っているりょうたにもたれながら寝てしまった。と言う設定だ。
「春ちゃん、寝ちゃったのかな?」
りょうたには悪いけど、私はこのまま寝たふりをしてりょうたの温もりを感じ続けたい…
「…………!!」
寝たふりをしていたのに声を出してしまいそうになった。りょうたは寝ている私を自分にギュッと押し込むように私の肩を押して、私の肩に手を置いてくれる。右肩はりょうたの体に触れていて左肩はりょうたの手で強く抑えられている。田舎のバスなので驚くほど人が少ないとは言え、恥ずかしい…けど、幸せ。きっと、私の顔は真っ赤になっているだろう。りょうたに気づかれないように気をつけないと、と思うが、意地悪な私は今、目を覚ますふりをして慌てるりょうたを見てやりたい。とも思ってしまう。どうしようかなぁ……
「春ちゃん、やっぱりかわいいなぁ……」
私が寝ていると思っているりょうたの言葉を聞いて私は真っ赤になる。かわいい。かわいいかぁ…そういう言葉はね。寝ている時じゃなくて直接言って欲しい気もするなぁ……
りょうたは私が寝ている時とかいつも私をどのように見てるのだろう。とちょっと気になって今回のことをしたが、りょうたは私が寝ている時も私を大切にしてくれているみたいだった。
どうしよう。そろそろ起きようかな。どうせ、今日も私とりょうたはずっと一緒にいる。起きてる時も寝る時も…りょうたが私が寝ている時も私を大切にしてくれていることはよくわかった。
だったらもう、寝てる理由はない。起きて、りょうたとの時間を楽しもう。
「ん…ごめん…寝ちゃってた……」
「嘘つかないでいいよ」
「気づいてたの?」
即答されて、私は恥ずかしさを感じた。気づいてたなら言ってよ。
「春ちゃんの寝顔、いつも見てるからさ…すぐにわかるよ」
「私のこと好きすぎかよ」
「うん。大好き」
いつものようにりょうたは大好き。と言ってくれた。私もりょうたに大好き。と返事をして周囲の目線がないことを確認してからキスをした。これが、今日のデート最後の思い出…
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