第37話 迷子





「りょうた、次は熱帯魚とか見たい」


ペンギンを見て満足しながら歩いていた私はりょうたの方を見てりょうたに言う。


「あれ…りょうた?」


私が振り返るとそこにりょうたはいなかった。


「ばか……」


私とはぐれたりょうたに連絡を取ろうとして私はスマホを探すが、私のスマホ…りょうたが持ってる………


「どうしよう……」


とりあえず、りょうたを探さないと…ペンギンのところに戻ったらいるかな?りょうた…どこにいるの?


ペンギンのところに戻ってもりょうたはいなかった。りょうたを探すために私はいろいろなところを歩き回った。りょうた…どこにいるの?


りょうたとの楽しいデートのはずなのに、私の横にはりょうたがいてくれない。寂しい。りょうたがいない。


「迷子センター……」


この歳で迷子放送は…恥ずかしい。いや、迷子になったのはりょうた。私はりょうたを探してるだけ、恥ずかしくない。恥ずかしくない。


「………」


悩んだ結果、迷子センターには行かなかった。恥ずかしかったし、りょうたを呼び出したとして、もし知り合いが水族館にいたらりょうたに恥をかかせてしまうし…いろいろ考えたら行けなかった。


「りょうた…どこにいるの……」


熱帯魚のようなかわいらしいお魚がたくさん泳いでいる水槽の横で私は泣きそうになってしまう。せっかくのデートなのにりょうたがいないのが辛かったし、1人でいるのが怖かった。


「大丈夫だよ。僕はここにいるよ」

「っ……」


私は突然、背後からりょうたに抱きしめられた。びっくりしたけど、嬉しかった。温かくて優しくて、ひょろひょろだけどたくましいりょうたの腕に抱きしめられて安心した。


「泣かないで。春ちゃん」

「な、泣いてないから!りょうたのばか。なんで私から逸れたの!」

「ごめんね。春ちゃんに寂しい思いさせて」


たぶん、逸れたのは私…なのに、りょうたは私がりょうたを一方的に責めても優しくしてくれた。


「りょうた、ごめん」

「いいよ。謝らないで」


りょうたは私の頭を撫でてくれる。そして私を抱きしめるのをやめて私の正面に回り込み私と向き合って手を伸ばす。


「デート、続けよ」

「うん!りょうた大好き」

「僕も春ちゃんのこと大好きだよ」


私はりょうたと手を繋いでりょうたと歩き出す。なんだよこれ、完全にバカップルじゃねえか。もう、バカップルでいいや。だって幸せだもん。





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