第32話 お出かけ前
「りょうた、お…お待たせ……」
いつもより気合いを入れておしゃれをした。りょうたに見て欲しいって気持ちと恥ずかしいという気持ちが混ざり合ってすごく複雑な気持ちになっている。
「全然待ってないよ。じゃあ、行こう…か……」
私を見て、りょうたが固まる。え、何、その反応……服とか化粧とか似合ってなかったのかな……
「りょうた……その……どう?」
足を交差させてちょっと可愛らしいポーズをとってみる。ちょっと、恥ずかしい……
「えっと、めっちゃかわいい。めっちゃ似合ってる。え、かわいすぎる。え、もう。かわいすぎてやばい」
オーバーリアクション。そう思ってしまうくらい大袈裟にりょうたはかわいい。かわいい。と繰り返して言ってくれた。
「えへへ。よかった。かわいいって言ってもらえて安心だよ…」
「安心して、春ちゃんは常にかわいいから。別におしゃれとかしなくても常にかわいいよ。ただ、今日は普段よりも数段かわいいってだけだよ」
嬉しすぎて死にそう。やばい。もう、満足なんだけど…今日、今からデートなんだよね?え?私、もっと幸せになれるの??やばいよ。幸せすぎて死んじゃうよこれ……
「バスの時間あるし行こうか…春ちゃんと並んで歩くと釣り合ってないって思われそうで怖いなぁ」
「そ、そんなことないよ……りょうただってかわいいよ」
「そこはかっこいいって言って欲しかったな…」
りょうたはちょっとだけ不満そうな表情をする。うーん。そんな顔されてもりょうたはかっこいいよりもかわいいの方が強いんだもん。仕方ない。
「まあまあ、細かいこと気にしない。早く行こっ」
りょうたにかわいいって言ってもらえた私はかなりご機嫌になり、りょうたの手を掴んで玄関に向かう。玄関で素足をお気に入りのサンダルに通してお気に入りの麦わら帽子をかぶる。
「ちょっと夏っぽいかな?」
「温かいしいいと思うよ。何より、めっちゃかわいいからその服装がいい」
「えへへ。ありがと。ねー、りょうた、悪いけどこれ持っててくれない?私のカバン小さいからりょうたのカバンに入れて欲しい」
「え、春ちゃんが手で持ってた方がかわいくていいのに…」
かなり古くさいカメラを私はりょうたに渡す。この服装でかわいさを引き出すための小道具として用意したのだが…正解だったみたいだ。
「重い……」
「これ、使うんだよね?」
「………」
「置いてこうか」
「うん」
スマホあるし…必要ないか…ただのファッション用の小道具にしては重いし……
いろいろあったが、玄関にカメラを置いて、私とりょうたは家を出てバス停に向かう。楽しいデートの始まりだ。
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