第29話 結果
「りょうた…もし、ダメでも……」
「春ちゃん、大丈夫。今日はお祝いのお泊まり会でしょう。楽しみにしてるよ」
もし、ダメでも…今日は一緒にいたい。そう、思って口にしようとした時、りょうたが私の口を塞いで言う。
「りょうた…信じてるよ」
教室に入る前に私は笑顔でりょうたに言う。これ以外、りょうたにかける言葉が見つからなかった。
「うん!信じてて」
教室に入り、私とりょうたは席に着く。私とりょうたの席は隣同士で(担任やクラスメートが席替えのくじを強引に細工しやがった)あるため、横を向けば、すぐ側にりょうたがいる。
私とりょうたが、席に着いて少し経つと、朝礼の鐘がなり、先生が教室に入ってくる。先生の手には大量のプリントの束が抱えられていて、先生は教卓の上に大量のプリントを置く。
私たちの学校では中間テストのように、5科目だけの場合は、テスト最終日の翌日の朝礼で全科目の答案と学年順位や、科目毎の平均点などが書かれた成績表が返されるシステムだ。このエゲツないくらい教師に不親切なシステムのせいで、教師たちの大半が中間テスト最終日は残業確定コースらしい。お疲れ様です……
と言うわけで、昨日残業したからか、かなりお疲れの様子の先生が次々とテストを返し始める。ご丁寧に5科目と成績表をクリップ止めしてくれていて、とても効率的にテスト返却をしてくれる。テストの結果にびびっている私からすれば本当にありがたい。
席順に取りに向かったため、私はりょうたより早くテスト結果を受け取った。ぶっちゃけ、私の成績なんてどうでもいい。私は先生からテストを受け取っても確認しないでさっさと席に戻る。
「どうだった?」
りょうたに聞かれるが、私の成績なんてどうでもよかったので、ぽいっとりょうたに先生から受け取った状態のテストを渡す。
「え…」
私の結果をりょうたは2度見して、私の顔とテスト結果を交互に見る。え、何その反応?
りょうたの反応を見て、私の成績に私が興味を持つと、ちょうどりょうたが自分のテストを受け取りに向かったのでりょうたから返してもらった自分のテスト結果を見つめる。余裕だったはずだけど…え、成績下がってる?と、りょうたの反応を見たあとだと思ってしまい恐る恐る見つめた。
なんだ、1位か…合計点数は……487点、いつもくらいじゃん。りょうたは何を驚いているのだろう。あ、数学100点だから驚いていたのかな?と、私には本気でりょうたがなぜ驚いているかわからなかった。
そんなことを考えていると、りょうたが戻ってきた。私はりょうたと一緒にりょうたのテスト結果を覗き込む。
以前、りょうたは150人中76位…今回は……
「微妙すぎ…」
「え?普通にいいじゃん!そりゃ、春ちゃんと比べたら微妙だけどさ…」
「まあ、頑張ったのは伝わったわ。お疲れ様。よく頑張ったね。次は…2位目指すよ」
「どうせなら1位目指す」
「自惚れるな、りょうたじゃ私には勝てん」
150人中11位…かなり、上がっていた。
よかった。これで、まだ、りょうたと一緒にいられる。
私は安堵した。私は、りょうたの邪魔になっていなかったと……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます