第27話 おまじない





「春ちゃん眠い…」

「私も眠い…」


朝、学校に向かいりょうたと手を繋いで歩いている途中はずっとそんなやり取りをしていた。私もりょうたも頑張って勉強して本当に一睡もしていないのだ。


「テスト中寝ちゃうかも…」

「約束、覚えてる…よね?」

「うん。覚えてる」


私の手を優しく握ってくれていたりょうたの手に力が入ったのを感じた。


「頑張ってよ。私、やっぱり、りょうたと一緒にいたいからさ」

「うん。死ぬ気で頑張る」

「今日のテスト終わったらさ、帰って少しだけ一緒に寝よう」

「うん」


今日のテストは英語、社会、理科、の3科目、午前中で今日のテストは終わるので、帰ってから明日の数学と国語の勉強をしないといけないが…数学は私の得意科目で国語はりょうたの得意科目、今日の3科目を乗り切れば…明日はまだ、なんとかなる。


「ねえ、りょうた」

「ん?な……」

「おまじない」


りょうたが私の方に顔を向けてくれた瞬間、私は背伸びをしながらりょうたにキスをする。


「りょうたが頑張れるおまじない。私がここまでしてあげたんだから成績下がったりしたら本当に許さないからね」


通学路、人気がないとはいえ、誰が見ているかわからないこの場所でキスをするのは正直恥ずかしいが…テスト前に私がりょうたにしてあげられることはこれくらいだけだった。


「春ちゃん、ありがとう。春ちゃんも頑張ってね」


りょうたはそう言って、私にお返しのキスをしてくれる。嬉しい。幸せ。


「まあ、私は…りょうたの応援なんかなくても余裕…だけど…その、ありがと……」

「春ちゃん、大好き」


りょうたはそう言って私を抱きしめる。


「ちょっ、急に抱きつくな……通学路だよ……」

「大好き」


ダメだこれ…話通じないやつだ。


「私も、りょうたのこと大好き。頑張ろ」

「うん」


私はりょうたを抱きしめ返す。もう、人目がどうこうとかどうでもいいや。こうやってりょうたを抱きしめて幸せを感じて、最高の気分でテストに臨んでやる。と開き直っていたのかもしれない。


「そろそろ行かないとね。遅刻しちゃう」

「あ、ほんとだ。急ご」


りょうたに手をひかれて私は走り出す。これからもこうやってりょうたと一緒にいたい。だから、テスト、頑張ってよ。




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