第26話 隣にいること





「りょうた…わかってる…よね?」

「う、うん……」


現在、時刻は23時、良い子は既に寝ている時間だ。だが、私とりょうたは良い子じゃない。いや、私は良い子なんだけど…りょうたに付き合わされてるだけ……


「一夜漬け…今日は…徹夜!!!」


ゴールデンウィークが終わり、少しすると中学生は中間テストを迎える。職員室に呼び出し食らったり受験生なのにも関わらず2人で遊んでばかりいる。と、職員室で認識されているりょうたの汚名返上をしなければ……入試どころではなくなる。


明日の中間テスト…りょうたには意地でも高得点を取ってもらわないといけないわけだが……

職員室に呼び出され、お手伝いをしたりもしたが…私とりょうたの先生からの評価は下がったままだ。


なんだかんだ理由をつけて毎日お互いの家に交互でお泊まりしたりしていたが……結果、全然勉強が捗っていない。やっぱり受験終わるまでは距離置くべきかな……


「りょうた…や、やっぱりさ……」

「嫌だ」


私が言い出す前に私が何を言おうとしたのか察したりょうたは速攻で拒否する。今は感情と進路、どちらが大切か…そう考えた時、私は……


「でも…」

「春ちゃん、じゃあさ、僕の成績が上がっていたらもうそんなこと言わないで…」


成績が上がっていたら……りょうたはそう言うが、私とりょうたが一緒に勉強する目標は……この辺りで一番難関の高校に2人で進学するため…だよ。

正直言って、りょうたの成績が少し上がったくらいでは……


「わかった。その代わり、りょうたの成績が下がったら、受験が終わるまで…お互い関わらないようにしよう」

「う、うん……」


私の隣に座っていたりょうたはシャーペンを机に置いて私の手を握る。


「ごめんね。僕がバカだから春ちゃんを悩ませちゃって」

「私こそ…ごめん。最初は…すごく厳しく教えるつもりだったのに…りょうたと一緒にいたら…勉強よりも他のことしたいとかいろいろ考えて結局、厳しくなんてできなかった…りょうたが、今、こうやって追い詰められてるのは私の責任……」


春香ちゃんはすごいや…って改めて思う。大好きなお兄ちゃんと一緒にいる時も、誘惑に負けないで厳しくできるのだから…やっぱり、私はダメだなぁ。


「春ちゃん、これ教えて」

「え、あ、うん。これはね……」


りょうたが一番苦手な英語の問題を私に質問してきたので私はりょうたに教えてあげる。


「やっぱり、春ちゃんの説明、すごくわかりやすい。それにこんなに難しい問題、春ちゃんがいなかったら諦めるしかないから春ちゃんがいてくれて本当に助かるな…ありがとう。今、僕の隣にいてくれて」


自分ってダメだな。と思った時、大好きな人がありがとう。と言って私の存在を肯定してくれる。これほど救われることがあるだろうか…


「ありがとう。りょうた…」

「え、ちょ…春ちゃん?なんで泣いてるの?」

「なんでもない。バカりょうた…」

「え、急にバカにされた酷い…」

「ありがと。大好き」

「話通じてる?」

「うん!」

「そっか…僕も、春ちゃんのこと大好きだよ」


そんなめちゃくちゃなやり取りがすごく幸せだった。





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