第22話 職員室にて




「さて、何で私があなたたちを呼んだか、心当たりはありますよね?」


職員室の澤田先生の席の側に用意された椅子に座る私とりょうたに、すっごく優しい表情で尋ねるが…

相当、お怒りのようだ。わざわざ椅子を用意して座らせてくれる辺り長丁場を覚悟しなければならない気がする。


「えっと…これといった心当たりが…」

「自転車、と言ってもですか?」

「………すみません。りょうたが寝坊したせいで遅刻しそうになり仕方なく自転車通学しました。えっと、遅刻するよりは…マシですよね?」

「え?ちょ、春ちゃ…」


りょうたが余計なことを言いそうになったので私は肘でりょうたの横腹を打つ。りょうたも私と一緒に寝てたから間違いじゃないもん。ていうか、りょうたがちゃんと起こしてくれたら遅刻しなかったもん。


「それで、違反自転車は一台しか確認されていませんが…どういうことでしょう?春さんの言い分からすると、2人で通学したのですよね?何故、違反自転車が一台しかないのですか?2人とも、自転車通学の申請…してないですよね?」

「………すみません。2人乗りしました」

「ごめんなさい」

「反省文、ちゃんと書くように。違反自転車通学に2人乗りした件も交えてきちんと書くようにね。あと、罰として授業後に少しだけお手伝いしてもらえる?」

「……お手伝いですか?」

「ええ、部活の顧問の先生にはお手伝いとだけ言っておくわ。今、快く了承してくれないと…部活の顧問の先生に、2人がしたことを話した上でお手伝いをしてもらうことになった。って言わないと…」

「センセイ、ワタシタチヨロコンデオテツダイシマス」


くそっ。言わされた…部活の顧問の先生に報告はずるいよ。逆らえないじゃん。


「じゃあ、授業後、よろしくね」


と、満面の笑みで言う先生に若干苛立ちを感じたが、私たちは無事解放された。


「春ちゃん、ひどい…」

「ごめんて…」

「僕、寝坊してないのに…」

「許して」

「……許す」


私が手を繋いで上目遣いでお願いするとあっさり許してくれた。チョロすぎるわ。かわいい。


と、そんな感じで職員室からは早々に解放されたのだが、教室に戻ってからが大変だった。


「付き合って早々にお泊まり?」

「どこまで進んだの?」

「春姫と一緒に寝たってマジなのか?」

「朝から2人乗りって朝からいちゃいちゃすな!」


と、教室に入った瞬間、クラスメートたちから質問や野次の嵐…恥ずかしいからやめてくれ。

って言うか、春姫ってなんだよ?え、私、姫とか呼ばれてんの?何それなんか嫌だな……


しばらくの間、教室は大騒ぎで大変だったが、授業が始まる時間になり、私とりょうたは解放された。こんなにも授業が始まって欲しい。と思ったのは今日が初めてだろう。




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