第19話 プチデート




日曜日、私とりょうたは朝からきちんと勉強した。朝からお昼まで、お昼ごはんを食べてから夕方までずっと2人で勉強した。


「疲れた…」

「お疲れ様…だけど…いくら疲れてるからって急にこういうことしないでよ…」

「私だって癒されたいの」


りょうたに膝枕を強制的にさせて、私はりょうたの顔を真下から見上げてりょうたに言うと、りょうたは私の頭を撫でてくれる。癒されるわぁ…


「りょうた、今から少しデートしよ。夜ご飯終わってからも少し勉強しないとだし、気分転換に少しだけどこか行こう」


夜ご飯の時間まで、あと1時間と少し…どこに行けるかな…と思いながら私はりょうたに提案した。


「春ちゃん、自転車貸して」

「え?自転車?」

「うん。2人乗りしよ」

「ん?ん?」


りょうたは無邪気な表情で言うが…え?自転車?2人乗り?


「こんな田舎で1時間くらいしかないってなると何もできないじゃん。だから、2人乗りしたい。前々から自転車2人乗りとかしたかったんだよね。好きな人と…」


そう言うことなら…やるか。2人乗り。

りょうたの言う通り、このど田舎じゃ1時間だけで行ける場所なんてほとんどない。最悪、さんぽでいいかな。と思っていたのだが、せっかくだし、2人乗り、してみたい。




思っていたのと違う……


「今日、ちょっと風強いねー」

「そうだねー」

「春ちゃん、ちょっと機嫌悪い?」


私の後ろからりょうたは私に尋ねる。ちょっと機嫌悪いかなぁ…

だってさ…彼氏と彼女が2人乗りするってなったら普通、彼氏のりょうたが自転車漕ぐでしょう!


「何でりょうたくんは後ろにいるのかなぁ?」


普段より重い自転車のペダルを必死に回転させながら私は後ろで楽しそうにしているばかに尋ねる。


「2人乗りできないから笑」

「笑うな。振り落とすぞ」

「ごめんなさい」


私だって、2人乗り始めてだしめっちゃ疲れているんですけど、え?少しは代わろうとか気遣えないのかなぁ?


「春ちゃん、ごめんね。情けなくて…」


りょうたは私の耳元でそう呟いて、私の肩に置いていた手を一瞬だけ離して、私を後ろから優しく抱きしめてくれる。


「次やる時はりょうたが自転車漕いでよ。約束ね。それまでに鍛えておくこと!わかった?」

「うん。ほどほどに頑張る」


あ、これ頑張るって言って頑張らないやつだ。

まあ、でも、いいか…これはこれで楽しいし、幸せだから。

私が出来るから、りょうたが無理にできるようにならなくてもいい。

どちらかが出来ないことはどちらかが、補えばいい。


そのために、人は人を好きになり、誰かと結ばれる。自分の弱いところを補ってもらうために。自分が成長するために、自分が誰かの力になってあげるために、自分と相手が幸せになるために。


私は、その誰かに…相手に…りょうたを選んだのだから。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る