第11話 馬鹿な時間





「疲れた〜」

「あはは…お疲れ様……」


部屋の片付けが終わり、夜ご飯を食べた。お母さんもお父さんもおばあちゃんもおじいちゃんもニヤニヤしながら私とりょうたのやり取りを見ていて…おじいちゃんたちはもっといちゃいちゃしないと。とか言ってくるし…まだ、付き合って数日なんだからね。

そんな感じで精神的に疲れた私は部屋に戻って速攻でベッドの上で横になる。すると、りょうたもベッドの上で横になって私をそっと抱きしめてくれる。え…いきなり…やば…かわいいかよ♡


「いきなり抱きつかないの…」

「え…あ、うん。ごめん…」


まさか文句を言われるとは思っていなかったのだろう。りょうたは少しだけ落ち込んだ顔をしたので私はりょうたを慰めるようにりょうたを抱きしめ返してあげた。するとりょうたは目をキラキラさせて私を抱きしめていた腕に力を入れる。嬉しいけどちょっと痛いよ。お願いだからもう少し力抜いて……でも…こんなに強く、りょうたが私を抱きしめてくれるのは嬉しかったので、何も言えなかった。


「りょうた…今日からちゃんと勉強するよ……」

「うん…」

「じゃあ、離して…」

「春ちゃんが離してくれないと離したくない」


私とりょうたはお互いに抱きしめ合いながら呟く。完全にバカップルになっている気がする。ずっとこうしていたいが…ちゃんとりょうたに勉強を教えてあげないといけないし……


「じゃあ…時間…決めよ。あと5分……いや、10分経ったら離して勉強始めよう」

「15分がいい…」

「わがままだなぁ…いいよ……♡」


私が10分と提案するとりょうたは15分と言ってきた。一瞬、もう勉強なんてしなくてもいいか…と思ってしまったが、ダメだ。ちゃんと勉強しないと……

こうしてりょうたと抱きしめあっているのはめっちゃ幸せなのだが…一つ、わがままが許されるのであれば着替えたい……りょうたは家に帰った時に着替えを済ませていたが…私まだ、セーラー服のままなんだよね…ちょっと横になるのがきついから着替えて楽な冗談で抱きつきたい。まあ…細かいことはどうでもいいか…幸せだしこれでいいや。




「春ちゃん…そろそろ15分…」

「あと5分……」

「うん……」


「りょうた…そろそろ時間…」

「あと5分…」

「うん…」


「春ちゃん…そろそろ時間…」

「あと5分…」

「キリないね……」

「うん…」


私もりょうたも、ずっとこうしていたい。と願っているみたいだった。離れたくない。りょうたを…好きな人の温もりを側でずっと感じていたい……


「春、りょうたくん、みんなお風呂出たから順番にお風呂入っちゃ……あらら〜ごめんなさい。お邪魔しちゃったわね。でも、2人ともまだ中学生なんだからほどほどにしときなさいよ…」

「ノックくらいしてよ!!!」


彼氏と抱きしめあって寝ているところを母親に見られた。最悪だ……きっと、今すぐにでもりょうたのお母さんと私のお母さんの電話が始まるだろう。初々しい娘と息子の恋愛談を話のネタにしながら今日もBBAたちは長電話をするつもりだ。恥ずかしい……


「もう、りょうた、先に入ってきて。私ちょっとお母さんに文句言ってくる」


私はりょうたから離れてベッドから起き上がり部屋を飛び出してお母さんに文句を言いまくった。お母さんに一通り文句を言った後、部屋に戻ると当たり前だが、りょうたはいなかった。家の中にいることはわかっているけど…少し…いや、かなり寂しく感じた。


りょうたがお風呂から出て私もお風呂に入り部屋に戻る。私のベッドに腰掛けてスマホをいじっていたりょうたの隣に座りドライヤーをりょうたに渡す。


「髪乾かして」

「はいはい」


りょうたは私からドライヤーを受け取り慣れた手つきで私の髪を乾かしてくれる。りょうたに髪を乾かしてもらう時間…割と好きだ。春ちゃんの髪サラサラだね。とか言ってもらえると嬉しい。


そんなこんなで2人で馬鹿みたいな時間を過ごしていたら割と遅い時間になっていた。


りょうたに勉強教えられないじゃん……




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