第10話 お片付け。
「りょうた…悪いけどさ…10分……いや、5分だけ縁側か茶室か居間で待っててくれない?」
浮かれた気持ちでりょうたを家に連れてきたのはいいが…私の部屋、信じられないくらい散らかっているのを忘れてた……彼氏にこんな部屋見せられない……
「え…急にどうしたの?」
「いいから!居間でおばあちゃんの相手でもしててあげて…お願いだから……」
「もしかして部屋が散らかっているとか?昔からだし今更気にしないよ」
「そうだけど…そうじゃなくて……その……着替えとか下着とか散らかしたままだから…その……絶対入っちゃダメ。入ったらりょうたのこと嫌いになるから、もう絶交だから…」
「あ…なるほど……じゃあさ、さっさと見られたくないものだけ片付けなよ。その後にさ、一緒に残りの片付けしよう。二人でやった方が早いし、せっかく春ちゃんの家に来たんだから一秒でも長く春ちゃんと一緒にいたい」
眩しすぎる笑顔でりょうたは私に言ってくれるが…彼氏に部屋の掃除してもらうって…女子として…やばい気がする。今からこんなんじゃダメだ。
私は今後常に部屋の掃除をして部屋を綺麗な状態に保つようにしようと決めた。いつでもりょうたを呼べるように……♡
でも、今日だけは手伝ってもらおう。私もりょうたと一秒でも長く一緒にいたいから……♡♡♡
「じゃあ…少しだけ…待ってて…見られたくないのだけ片付けるから…」
「うん。わかった」
りょうたを部屋の前で待たせて私は大急ぎで下着や服を片付ける。片付けたものを適当に洗濯かごにぶち込んで、部屋を出て洗濯機の側に置かれている巨大な洗濯かごにぶち込んで私は部屋に戻る。
「お待たせ…散らかってるけど…入っていいよ」
「はーい。お邪魔しま………す………」
りょうたは私の部屋に入って…一瞬、固まった。ねぇ…だからさぁ…片付け終わるまで待っててって言ったじゃん。その反応はやめてよ……私、泣くよ。
「やっぱり、適当に家の中で待っててくれて構わないよ」
「いやいや、手伝うよ。あー掃除しがいがありそうだなぁ」
フォローになってない。とどめ差しに来てるよ。その一言……
絨毯の上に散りばめられている学校のプリントや教科書、勉強机の上は雑誌や漫画で埋め尽くされていてベッドの上にはぬいぐるみが散りばめられている。私、このベッドの状態でよく寝れているな…と思うくらい、ベッドの上にはぬいぐるみが大量発生している。ていうか、このベッドの状態でよく、今日も一緒に寝ようね。なんてりょうたに言えたよね…自分、ばかだわ……
「じゃあ、さっそく片付けようか…僕は床の掃除するからさ、春ちゃんはベッドと机の上の掃除してよ」
「わかった。ありがと」
りょうたはそう言いながら絨毯の上に散らばっているプリントや教科書をまとめ始める。りょうたにだけさせるわけにはいかないので、私もテキパキと片付けを始める。
「あの…春ちゃん……ごめん……」
「ん?どうした……の……ぅぅ……」
私がりょうたの方を振り向くと、りょうたの目の前には私の下着が置かれていた。私は顔を真っ赤にして慌てて下着を回収して部屋を飛び出して洗濯機横の洗濯かごに下着をぶち込んで部屋に戻る。
「何も見なかったことにして…」
「う…うん。僕は何も見てないよ……なんか、ごめんね」
「何も見てないんだから謝るな。ばか…」
「あ…うん。ごめん」
悪いのは私なのに…りょうたに謝らせてしまった。りょうたは申し訳なさそうに少しだけ落ち込んだ様子で部屋の片付けを再開する。私が悪いのに……りょうたに嫌な思いをさせてしまった。
「え?春ちゃん?」
「手伝ってくれて…ありがと……」
私はりょうたの背中にもたれかかるようにりょうたを抱きしめて言った。後ろから抱きしめたからりょうたの顔はよく見えないが、りょうたは嬉しそうな…幸せそうな表情で、私にありがとう。これくらい全然大丈夫だよ。と言ってくれた。
りょうたの優しいところが好き。でも、優しいからって甘えすぎるのはダメだ。部屋の片付けとかくらい自分でできないと……りょうたのお姉ちゃんの春香ちゃんみたいに…家事全部きちんとできるようになって……りょうたと結婚した時に……ちゃんとりょうたを支えてあげられるようになりたい。
結婚したら…とか、考えるの早すぎるかもしれないけど、このままずっと、りょうたと一緒にいたらあっという間だろうからさ…今のうちからしっかりしないと。
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