第9話 ずっと一緒
「ねー、りょうた。今日はさ、うちにお泊まりに来てよ」
授業が終わり、部活帰りに私とりょうたは手を繋いで一緒に帰宅していた。私とりょうたは吹奏楽部に入っている。担当楽器は私がフルートでりょうたはクラリネットだ。現在、中学3年生の私とりょうたはコンクールが終わったら引退する。
部活帰りに、りょうたと一緒に歩いていると、もうすぐりょうたと手を離さないといけない…と急に思ってしまい、まだ手を離したくないと思った私はりょうたに提案した。りょうたと、ずっと…一緒にいたい。お兄ちゃんたちが羨ましい…一緒に暮らしていて、いつも一緒だから…
「え…急だね…」
「嫌?」
「嫌じゃないけど……」
「じゃあ、お泊まりに来てよ」
「うん。親に聞いてみるね」
「うん」
私とりょうたはまず、りょうたの家に向かった。りょうたのお母さんがいいよ。と言ったので、私はりょうたの家で電話を借りて家に電話する。中学校にスマホは持っていけないので、親にりょうたの分も夜ご飯用意して。と伝えないといけない。
電話に出たお母さんに伝えると2つ返事でわかった。と言ってくれた。りょうたのお母さんが電話変わって欲しい。と言うので、りょうたのお母さんに電話を変わる。最初の頃は、りょうたのことよろしくお願いします。と言っていたが、だんだんと話が逸れてどうでもいい話に変化していく。
「春ちゃん、お待たせ。準備できたよ」
りょうたは大きめのバッグを持って、私の横にやってくる。制服からは着替えていて、ラフな感じの私服になっている。制服やパジャマなどを鞄に詰め込んで、リュックには明日の学校の道具が入っているのだろう。かなり重そう。
「何か持とうか?」
「これくらい大丈夫だよ。気を遣ってくれてありがとう。待たせてごめんね。行こうか」
「うん」
私がりょうたから荷物を預かろうと手を伸ばしたらりょうたは荷物の代わりに手を置いてくれた。そのままりょうたと手を繋いで歩き始める。
「春ちゃんの部屋でお泊まりするの久しぶりだね」
「そうだね。今日も一緒に寝ようね」
「うん。いいよ」
「やった」
りょうたと歩きながら楽しみ。という感情が高まる。幸せ。今日もりょうたとずっと一緒にいられる。でも、不安な気持ちもある。今日はよくても、明日…りょうたと離れ離れになった時、私は寂しさに耐え切れるのだろうか…
我ながら重いなぁ。と思うけど、24時間365日、一生、私はりょうたと一緒にいたい。だから、りょうたと一緒にいられて幸せだけど…お互い中学生で実家で暮らしている以上は、りょうたと毎日一緒にいられるわけではない。りょうたが側にいてくれない時…私は耐え切れるかな…
「春ちゃん?どうしたの?」
「ん?あ、なんでもないよ」
顔に出てしまっていたようだ。心配かけて申し訳ない。こんなことで不安を感じているなんて、りょうたには恥ずかしくて言えないよ。
「ならいいけど…何かあったら言ってよ。僕にできることならなんでもするからさ…」
「ありがとう。じゃあさ…ずっと私と一緒にいて…」
「そんなことでいいの?喜んで、ずっと春ちゃんの側にいるよ」
「ありがとう。じゃあ、私もずっと、りょうたの側にいてあげる」
「ありがとう。嬉しいよ」
りょうたが言ってくれた、ずっと私の側にいる。のずっとが、どういう意味なのか…本当に常に私の側にいてくれるという意味なのだろうか…もし、そうだったら…どれほど幸せなのだろうか……
「りょうた…好き…」
「ん?急だね…僕も春ちゃんのこと好きだよ。大好きだよ」
「えへへ。ありがとう。嬉しい」
変なことを考えるのはやめよう。今、幸せならいいや。せっかくの幸せな時間なんだから、たっぷり幸せな時間を楽しまないとね。
そう思いながら私は家の扉を開けて、りょうたと一緒に家に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます