第8話 お昼の時間




「りょうた、お待たせ…」


ゴールデンウィークが終わり、今日からまた学校に通う日々が始まる。

朝、私が家を出ると家の前でりょうたが私を待ってくれていた。付き合うことになって…初めての学校…付き合う前と比べて何か変化はあるのかな……

などと考えながら私はりょうたの隣に立ち、りょうたと手をそっと繋ぐ。何故だろう。一昨日、昨日は緊張して、ドキドキしていたのに…今は…落ち着いている。落ち着いて幸せを感じられている。これが慣れ…というものなのだろうか…


「りょうた、学校ではさ…どうする?」


私と付き合っていることで、何かしらの変化があるのかはわからない。りょうたは…どうしたいのだろう…私なんかと付き合っていること…誰にも知られたくないかな……


「春ちゃんはどうしたいの?」

「私は…できるだけ一緒にいたい。でも…りょうたが嫌なら…学校では我慢する……」

「嫌なわけないじゃん。春ちゃんみたいな子と付き合っているなんて鼻が高いしさ…むしろ春ちゃんの方こそ嫌じゃないかな?僕なんかと付き合っているって…周りに知られるの嫌じゃない?」

「全然嫌じゃないよ。じゃあ、学校でもできるだけ一緒にいよう」

「うん」


りょうたに嫌なわけない。とか鼻が高い。とか言ってもらえて私はご機嫌になる。すごく、嬉しい。

私とりょうたは手を繋いで学校まで2人で歩いた。学校の近くになると、周囲に学生が増えて恥ずかしいかったが…りょうたと手を離すことはしなかった。私は、離したくなかった。りょうたも…そう思ってくれているのかな……


私とりょうたが手を繋いで教室に入るとクラスメイトはついに付き合った?みたいな感じの雰囲気になる。友達とかに尋ねられて、うん。と答えるとみんな、やっとか〜みたいな感じの雰囲気になってしまい、私とりょうたがお互いに恋愛感情を抱いていたことが周りには筒抜けだったことに気づいてちょっと恥ずかしい感じになってしまう。


「りょうたと付き合ったって言ったらみんなやっとか…みたいな感じの反応するんだけど……」

「うん。僕も同じ感じのこと言われた。春ちゃんかわいいからさ、友達から羨ましいってめっちゃ言われたよ」

「え、そうなの?私もりょうたみたいに謙虚で優しい子と付き合えて羨ましいって言われたよ」


午前中の授業が終わりお昼の時間、教室で一緒に弁当を食べると周りの視線が気になる気がするので、私とりょうたは人目があまりなさそうな体育館横にあるベンチに並んで座って弁当を食べていた。


「りょうた、今日の弁当ね。自分で作ってきたんだ」

「え、そうなの?」

「うん。久しぶりにりょうたにご飯作ってあげたいな…って思ってさ…少しでいいから食べてくれないかな?」


りょうたは自分の弁当を持ってきているので、私の弁当とは別に、無理のないような量のおかずをりょうた用に小さなお弁当に入れて持ってきていた。


「え、本当?春ちゃんの料理めっちゃ美味しいから好きなんだよね」


そりゃね…私に料理教えてくれたのはりょうたの姉である春香ちゃんだもん。春香ちゃんは家事全般完璧にこなせるので、料理もめちゃくちゃ上手だ。そんな春香ちゃんに昔から料理を教えてもらっている私は、りょうたの家の家庭の味の料理を作れる自信がある。りょうたが美味しい。と言ってくれるのも納得だろう。


「ほら、食べさせてあげるから、食べて」


私はりょうたの好物の唐揚げを箸で掴んでりょうたの口の前まで運ぶ。やばい…めっちゃ恥ずかしい……りょうたの顔が真っ赤になっていることがよくわかるが、私の顔も真っ赤になっているだろう。りょうたは目の前で震えている唐揚げをパクリと食べて、美味しい。と言ってくれた。


「じゃあ…お返しして」

「う…うん…」


りょうたは私の弁当から唐揚げを掴んで私に食べさせてくれた。やばい幸せすぎるよこれ……


こんな風にいちゃいちゃしながら…お昼ごはんをりょうたと食べていたら全然時間が足りなくて最後の数分で私とりょうたは慌てて弁当を食べ切ることになってしまうとは、この時の私は思っていなかった。




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