第6話 最初の1ページ




「綺麗なお花だね」

春香ちゃんがおすすめするだけあって、かなり綺麗なお花畑だった。広場一面に咲いていたり、間もなく咲き誇ろうとしている花々の美しさ、その広場を大好きな人と歩くことができる幸せ。最高すぎる。

「そうだね。春ちゃん、せっかくだし、写真撮っていい?」

「いいけどさ…一緒に撮らないとだめだよ」

りょうたが私にスマホのカメラをむけて言うので、私はりょうたにべったりと引っ付く。

「ほら、早く写真撮って」

すごく綺麗なお花畑とはいえ、ど田舎のど真ん中にあるこの広場にはほとんど人はいない。とはいえ、こんなに密着しているのは…恥ずかしい……

「う、うん」

りょうたが写真を撮ってくれたが、私もりょうたも顔が真っ赤になっていて、笑い方も引きつっているように見えた。しかも、りょうたの手がめちゃくちゃ震えていたせいでピントが合っていない。私とりょうたが付き合って、最初に撮った写真がこれか…と言いながら私とりょうたは笑った。写真を撮るときも…今みたいに自然と笑えたらいいのに…たぶん、そのうち慣れて写真を撮るときも自然と笑えるようになるのだろうが、せっかくの思い出がこんなガチガチの写真なのはちょっと嫌だから…早く普通に笑顔を出せるようにしたい。


「この花なんて名前なのかな?」

りょうたが綺麗なピンク色の花を指差しながら呟く。私もりょうたも花の名前など全くわからない。りょうたの姉である春香ちゃんなら詳しいかもしれないが…私とりょうたにはよくわからない。

でも、お花を見て綺麗だとは思う。この花は好き。この花が綺麗。と、りょうたとお互いに好きな花を言い合う。もちろん、りょうたが好き。とか、綺麗。と言っていた花の特徴は覚えた。今度、詳しく調べたいと思ったから…

「あ、すごくいい写真が撮れた」

りょうたはそう言いながらスマホを見つめる。私が見せて、と言いりょうたのスマホを見せてもらうと、スマホの画面には広場に座ってお花を触っている私が写っていた。今、撮ったばかりの写真なのにもうお気に入りの写真に登録されているのを見て私は笑ってしまった。

「お気に入りに登録するの早いよ」

「だって…気に入ったんだもん。仕方ないじゃん…」

「まあ、いいけどさ…」

「待ち受けにしていい?」

「はぁ?それは…ちょっと恥ずかしい…」

いや、普通にさ、恥ずかしいよ。あのね。こそっと待ち受けにするならかわいいなぁ。って許してあげるけどさ…さすがに…面と向かって言われると…ね……

「だめ…かな?」

悲しそうな表情をして、りょうたはスマホに写っている私の写真を見つめる。その表情はさぁ…ずるいよ…

「まあ、どうしてもって言うなら…いいよ」

「やった。ありがとう」

りょうたはすごく嬉しそうな表情でさっそく先程の私の写真を待ち受けに登録している。いくらなんでも喜びすぎな気もするが…そんなに喜んでもらえると嬉しい。私、りょうたにちゃんと愛されてるんだ。って…思えるから……

「じゃあ、私はさっきの2人で撮った写真待ち受けにしようかな…」

「え、あれでいいの?もっと綺麗に撮れるまで撮り直す?」

「あれでいいの。いや、あれがいい。私とりょうたの一番最初の一枚はあれだから。変えようのない事実だから…だから、しばらくはあれでいい」

「そっか、春ちゃんがそれでいいならいいと思うよ」

私はその場で、先程2人で撮った写真を送ってもらい、待ち受けに設定する。


全くピントがあっていなくて、せっかく背景に綺麗なお花畑が写っているはずなのに、お花畑の魅力は感じられない。私とりょうたの顔も不自然な笑みを浮かべている、不出来と思われる写真。撮り直すのも悪くないかもしれないが、私はこれがいい。

だって、この写真は…これからずっと…何百枚、何千枚、何万枚と…増え続けていく私とりょうたの写真の最初の一枚だから…綺麗な写真なんてこの後の思い出でいっぱい刻める。だから、今はこれがいい。きっと…この初々しさは今しか味わえないだろうから…最初の一枚、最初の1ページはこの一枚だけだから…


思い出のアルバム、1ページ目、私の心のアルバムに、しっかりと刻み込まれた。





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