第4話 小さな幸せ
「ねえ、りょうた…今日は一緒に寝ていいよね?」
私はりょうたのベッドで勝手に横になりながらお風呂から出たばかりのりょうたに尋ねた。今までなら、りょうたの部屋でお泊まりをする時は私がりょうたのベッドで寝て、りょうたは絨毯の上に布団を敷いて寝るのが基本だったが…付き合ったんだし…一緒に寝るくらいいいよね?大好きなりょうたと一緒に寝たい。
「え…一緒にって……」
「別に一緒に寝るくらい問題ないでしょう?お兄ちゃんたちも一緒に寝てたし…」
お兄ちゃんの場合、春香ちゃんとまゆちゃんに抱きつかれながら寝ていたなぁ…まさに両手に花って感じだった。
「まあ…春ちゃんがいいって言うなら……」
「うん。じゃあ、一緒に寝よう」
一緒に寝よう。と言ったはいいが、内心めちゃくちゃドキドキしている。今まで同じ部屋で寝ることはあっても同じ布団で寝たことは…あるにはあるが…幼稚園とか小学校低学年の時だから…
少しの間、りょうたと明日のデートについて話してからもう寝ることになったのだが…
「りょうた、早く寝よ」
りょうたがずっとそわそわしてベッドに入ってくれない…まあ、気持ちはわかる。緊張するのもわかるしドキドキする。
「やっぱり…いきなりすぎたかな…ごめんね。今日はやっぱり別々に寝よう…」
「そんなことないよ。春ちゃんと一緒に寝たい」
私が悲しそうな表情で別々に寝ようと提案するとりょうたはすぐにベッドに入ってくれた。チョロい。
「りょうた、おやすみ」
「うん。おやすみ、春ちゃん」
………寝れない。ドキドキしすぎて寝られないよぅ。
お兄ちゃんと春香ちゃんとまゆちゃんは何で普通に寝れるの?え?大人だから?
おやすみ。とりょうたに言ってからたぶん1時間くらいは経過した。りょうたは…寝ているのかな?よく寝られるな……
私は春香ちゃんやまゆちゃんみたいに眠っているりょうたの腕を抱きしめた。
「え…春ちゃん?」
私がりょうたの腕を抱きしめるとりょうたは驚きの声を上げる。起きていたのか…めっちゃ恥ずかしいじゃん…
「このまま…寝ていい?」
「う、うん。いいよ」
りょうたの心臓の鼓動が激しくなるのを感じた。きっと、私の心臓の鼓動もすごく激しくなっているだろう。やばい。余計寝られなくなったかも…明日の初デートに備えて早く寝たいのに……
「春ちゃんまだ起きてる?」
私がりょうたの腕を抱きしめてから1時間くらい経過した時、りょうたは私に声をかける。まだ、起きてたんだ。
「うん。ドキドキして寝れないから起きてるよ…」
「僕もドキドキして…幸せすぎて寝られないよ。こんなに幸せでいいのかな…」
「これからもっと幸せにしてあげる…」
「ありがとう。僕も必ず春ちゃんを幸せにしてあげる」
りょうたはそう言って私を抱きしめてくれる。すごく…幸せ…お互いに抱きしめあって横になっているだけなのに…こんなにも幸せになれるんだ。
たったこれだけの些細な幸せ…こんなにちっぽけな幸せに…私はずっと憧れていたのだろう。これからもっともっと幸せなことはいっぱいあるだろう。でも、こう言う些細な幸せをこれからも大切にしたい。
私とりょうたで作れる幸せは…取りこぼしのないように全ての幸せを掴みたいなぁ。と、これからの幸せについて考えていたら、いつの間にか眠っていた。すごく幸せに熟睡できた。もうずっと起きていたくない…と思ってしまうほどに……
「ん……」
温かくなってきたのを感じて私は目を覚ます。周囲はすでに明るくなっていて、もう朝なのか…と思っていると、すでに起きていたりょうたが私におはよう。と言ってくれたので、おはよう。と返事をしてスマホに手を伸ばす。りょうたはいつから起きていたのかな…ずっと抱きしめてくれていたのかな…と考えて幸せな気持ちになっていたのだが…
「え?」
私がスマホで時間を確認すると時刻はすでにお昼前になっていた。予定ならもっと早い時間に起きているはずだったのに…
「ごめん。ずっと起こさないと…って思ってたけど…春ちゃんをもっと抱きしめていたくて…それに、春ちゃんすごく幸せそうに寝てたから起こし辛くて…」
「バカ…予定台無しじゃん……」
りょうたに言われたことが嬉しくて、きっと私は頬を赤くしてりょうたに返事をした。
とりあえず、私とりょうたはデートプランを組み直すことにしたが…お互いに離れようとしなかった。なので、私とりょうたはお互いに抱きしめあってデートプランの再構築をしたのだった。
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