第2話 2人の道




「ねえ、春ちゃん…そろそろ手…離して欲しい…かな…」

「何?私と手繋ぐの嫌なの?」

お兄ちゃんたちに見送られて駅の改札を通り階段を上り電車に乗ってりょうたと並んで座ってからも私はりょうたと手を繋いでいた。するとりょうたは顔を赤くしながら私に言った。

「いや、そうじゃないけど…恥ずかしいなって…」

「大丈夫よ。誰も見てないって…それに、私はりょうたと手を繋いでいたいの。だめ?」

「だめじゃないよ。じゃあ、手繋いでいよう」

「うん」

私が笑顔でうん。と答えるとりょうたはかわいいなぁ。と呟く。こうやってかわいいなぁ。と言うりょうたを見てなんとなくお兄ちゃんを思い浮かべてしまった。お願いだから、りょうたは私のお兄ちゃんにこれ以上似ないでね。似るならりょうたのお姉ちゃんである春香ちゃんに似てね。

「ねー、今日さ、久しぶりにりょうたの家に泊まりに行ってもいい?」

「え、たぶんいいって言われるとは思うけど…いいの?」

「うん。りょうたと一緒にいたい」

「いや、そうじゃなくて…その…年頃の男子の家に泊まりに行くって…春ちゃんのお母さんは許してくれるの?」

なんだ、そんなことを心配しているのか…と思いながら私は鼻で笑う。

「お兄ちゃんを春香ちゃんと同居させたお母さんだよ。私がりょうたの家に泊まりに行くくらいで文句言わないでしょう」

「たしかに…」

りょうたは笑いながら同居した。私のお母さんもりょうたのお母さんも中々ぶっ飛んでるからなぁ…文句は言わないと思うし寧ろ、行ってきなさい。とニヤニヤしながら言われる気がする。

「ていうか、りょうたが年頃の男子って、笑わせないでよ」

「えー何それ…酷いなぁ…」

「へー、何?じゃあ、今晩ちょっとアレなことする?」

「え…あれなことって…え…え…」

りょうたは顔を真っ赤にしながら戸惑う。かわいいなぁ。やっぱり、りょうたはまだまだお子さまだわ。

「冗談よ。そういうことは…やっぱり、お兄ちゃんたちくらいの歳になるまではしないよ。焦っちゃってかわいいねぇ」

「そういうことってどんなこと?わかんないなぁ?春ちゃんはどんなことを考えてたのかな?」

私にかわいいと言われてムッとしたりょうたはわざとらしい声で私に言う。

「わからないの?じゃあ、今晩、教えてあげようか?」

「いや、だめ、そういうのは早いよ…」

私がりょうたの耳元で囁くとりょうたは慌てて私に言う。かわいいなぁ。

「そういうのってなぁに?私、わからないなぁ」

「春ちゃん性格悪い……」

私の言葉を聞いたりょうたはふて腐れた顔で私に言う。性格悪いかぁ…聞き捨てならないなぁ…

「そっか…性格悪いかぁ…じゃあ、私みたいな悪い子がりょうたの側にいたらいけないよね…」

「え、え、嘘…嘘だよ。春ちゃんはめちゃくちゃ優しくてめちゃくちゃいい子だよ。だから僕の側にいて…」

かわいすぎかよ。こいつ。

「うん。ずっと側にいてあげる」

「春ちゃん…ありがとう…」

「もう、泣きそうな表情するなって…大丈夫。私がりょうたのこと嫌いになるわけないし、ずっと側にいてあげるって言ってるでしょう」

りょうたが泣きそうな表情で私にお礼を言うのでちょっと罪悪感を抱いてしまった私は罪滅ぼしにりょうたをそっと抱きしめてりょうたにそう言った。すると、りょうたはガチ泣きしてしまった。男なのに情けない…春香ちゃんに似て欲しいとは言ったけど、こういうところは似てほしくないかな…まあ、弄りがいがあるからいいか……

「ほら、泣かないの」

「うん。ごめん」

私がりょうたの涙を指で拭ってあげるとりょうたは幸せそうな表情でありがとう。と言う。かわいいなぁ…


そんな感じのやり取りをしていたり、電車の乗り換えをしてまた同じようなやり取りをして数時間すると地元の最寄り駅に到着した。

お兄ちゃんたちの下宿先と似たようなど田舎で、駅の周りは田んぼだらけだ。

私とりょうたは手を繋いで田んぼ道を歩く。最初に手を繋いでからほとんど手を離していない。ずっと、こうしてりょうたと2人で手を繋いで歩いていたい。

この田んぼ道も…進路と言う道も…将来と言う道も…私は、幼馴染みと…頼りないけど、大好きな彼氏と…りょうたと2人で一緒に手を繋いで歩みたい。そう思いながら私は田んぼ道を歩いた。


これから先も2人で手を繋いでいろいろな道を歩こうね。私の隣を私と歩いてくれてありがとう。


照れくさくて口には出せなかったが、私は心の中で私と手を繋いで私の横を歩いてくれているりょうたに伝えた。










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