第2話 夏の終わり

 高校2年の夏が終わりまた学校が始まった。電車で最寄りの駅まで乗りそこから歩いて学校まで行く。駅で涼香と健斗と合流していつものように3人で学校へ向かう。まだ暑さが少し残っている。セミも鳴いている。いつもみたいにいろいろ話しながら向かう。健斗は野球部で今年の夏の大会でいい結果が出せなかったみたいだ。涼香もバスケ部で大会に出たが二回戦目で負けてしまったようだ。みんなこの夏失敗しているみたいだ。

 校門を抜けて下駄箱で上履きに履き替えて教室へ向かう。僕と健斗は同じクラスだが涼香は隣のクラスだ。教室へ入り窓側にある自分の机の右横に鞄をかけて座った。クラス内は夏での思い出を楽しそうにみんなと話している。結局この夏休みどこにも出かけてないし楽しい思い出もない。ほとんど家にいたなと雲ひとつない空を眺めながら思っていた。

 今日は始業式と夏休み前に配られた課題を回収して担任の話を聞いて解散となった。帰る準備をしていたら隣のクラスから涼香が来て入り口前でこちらを見ている。急いで向かう。健斗は部活があるみたいですぐに教室を出てグランドにいた。グランドの横を通り健斗にまたね、とあいさつをしてから学校を後にした。途中でコンビニに寄って飲み物を買った。横のレジで涼香がお菓子やアイスなど沢山買っていた。コンビニを出て近くにある公園のベンチに座ってコンビニで買った紅茶を飲んだ。隣では涼香が小さなボトルが2つくっついているアイスを取り出して割っていた。彼女はアイスを口でくわえながら残った1本を僕にくれた。お礼をして僕もアイスを食べた。ホワイトウォーターの味がする冷たいものが体の中を流れていくのがわかる。2人無言で目の前にある遊具を見ながら食べていた。少し暖かい風が頬を撫でていく。彼女はあっという間に食べきりごみを鞄から出した袋に入れて立ち上がり伸びをしていた。

「食べ終わったらごみ、この袋に入れといて」

僕がうなずくと彼女は走ってブランコの方へ向かった。僕もごみを袋の中に入れてブランコへ向かい隣のブランコに座った。ブランコなんて久しぶりだ。最後に乗ったのは多分小学生の頃だろう。そのせいか少し低く感じる。隣では彼女が前後に揺らしていた。

「ねえ、なんでピアノ弾いてるの?」

唐突に彼女が質問してきた。あまりにも急だったからびっくりして彼女の方を見て少し固まってしまった。質問の意図が全く分からない。でも聞かれた質問には答えてあげないと。

「多分ピアノを弾くことが今は生きがいなのかもしれない。だから弾いてるのかも」

そう答えると彼女はふ〜んと言ってブランコから降りた。僕も降りて鞄の置いてあるベンチに戻り荷物を持って公園を後にした。その後の帰り道はお互い一言も喋らずに駅まで着いた。改札を通りちょうど止まっていたいつも乗る電車に乗り家から近い最寄り駅で降りて彼女と別れた。結局彼女との会話はあの質問が最後だった。家まで歩いている時もずっとなぜあんな質問をしてきたのか考えていた。

 家に着き荷物を自分の部屋に置いてネクタイを外してキッチンに向かった。まだお昼を食べてないので適当に食べれる物を探す。冷凍庫に冷凍食品のナポリタンがあったのでそれをレンジで温めて食べた。

 結局この年はそこまで大きい出来事もなく高校2年が終わった。

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