第33話 まだ頑張れる
次の日に学校に行くと、最近とは周囲の様子が違った。ココロが久しぶりに学校に来たからだ。周囲には彼女の友達であろう生徒たちが輪を作って彼女の復帰を祝っていた。それは僕にとって彼女が復帰したという嬉しいことであり、加えてココロがこの学校の雰囲気を変えてしまうほどの人気者であるという事実を改めて実感させられる出来事でもあった。なんにせよ基本的に誰にとってもプラスなでき事であることだったことに違いはない。引っかからないように言うなれば、ココロ自身がどんなふうに今の状況を過ごしているかだけが気がかりだ。あくまで僕の視点からの感想になるが、ココロは今復帰したての状態で周りはいつも通り。そんな状態に放り込まれた感覚に陥っているはずだ。
まあ、あの調子なら大丈夫だろう。総合的に見て良かったってことだ。
ここまでは…
遠巻きに見守っていた僕をココロが見つけるや否や近づいて来て、話しかけてこなければ。あの時は焦った、そして何より。俺らの楽しい時間を邪魔するとは何事だと言わんばかりのあの周りの視線が怖かった。
だって、僕みたいな陰の民にいきなり学年のマドンナが話しかけてきているんだ。復帰早々に。確かに前から部活は一緒ってことはバレていたし、仲が良かったというのもある程度の人もわかっていただろうが、やっぱり嫌なものは嫌なんだろう。適当に流して逃げてしまった。ココロが部室に来てくれたらこれも含めて話そうと思った。
朝からの周りの視線は結局柔らかくならなかったし。授業が終わって早々に。逃げるように教室から部室へと歩き出す。なんかこうしていると最初にココロと出会った時を思い出す。
新しいスタートを切るのだと、自分の頭が思っているかもしれない。次第に動く足が速くなる。あの日の蜘蛛は廊下に新居を構えたらしい。僕らを結びつけるものはあのUSBメモリではなく、音楽になった。
部室の扉に手をかけて、深呼吸。笑顔を作って、いや自然に笑顔になって。扉を開く手に力を入れた。
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