第29話 奏で2
「ミライ君、これを言ってしまったら君に大きな負担をかけることになってしまうのだけれど」
さっきまでのたのしい雰囲気とは全く異なる声色で、ユリさんは言葉を紡ぎ始めた。でも正直僕はどうしたらいいのかわからない。ココロの支えになりたい反面、ココロやユリさんにこれ以上関わっていいのかという一種の罪悪感のようなものも自分の中に存在している。
さっき感じたまざっていいというプラスの感情が、同じような働きでマイナスになっている。言葉にすると何が何だかわからないが、引くことはできないそういわれているような気がした。そしてそれを自分が理解していた。
僕の態度を無言の肯定だとしっかり受け取ってくれたようで、今度は画面の中のケイコさんが筆談を始める。
「まだココロには伝えられていないのですが、私の命はそう長くないそうなのです」
背筋が凍る。この言葉を現実にしたような、体が震えるような感覚。死という言葉に、現実に。向き合うという残酷。
予想はしていたのにやっぱり気持ちの整理が追い付かない。仕方のないことだが、そんな状態の僕にさらなる難題が降りかかる。
「私が居なくなったら、ココロは絶対に悲しむでしょう。立ち直ることを手伝ってあげてくれませんか?」
「私からもお願いしていいだろうか。その役目は私じゃ無理だと思うんだ。」
ユリさんが頭を下げる。画面の中のケイコさんもだ。放心状態の心で反射的に返答した。
「僕にできることは精一杯やります。」
文字どおり、それ以上の言葉が出てこなかった。本当に、何を言えるよう身体状況ではなかったのだ。
ココロの衝撃はこんなもんじゃないだろう。これを知ったときのココロは、現実になったときのココロは...
僕はどうやって接すればいいのだろうか。どうすればいいんだろうか。
報告から戻ってきたココロに、ユリさんとケイコさんはいつもどおりに接している。ように見える。
なのに僕は、そんなにうまくココロに接するということができなかった...二人はさっきのように言ってくれたが、僕にこんな大役が務まるのだろうか。
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