第23話 文化祭にて!3

 あの状態で僕が残っているのもおかしな話だろう。

 あの後、ケイコさんにサッと挨拶をして直ぐに病院を出てしまった。

 頭で色々なことを考えながら、バスに乗った。そして今に至る。

 あまり悪い未来を考えたくはない。けど、いずれその時は来てしまうんだろう。僕はその時、ココロにどんな言葉をかければいいのか。どんな風に接すればいいのか。今日の出来事でいっそうわからなくなってしまった。

 今日のココロの乱れ用をみると…

 やはり、考えたくはない。

 それに、考えたところで僕にできることはない。

 今日そのことを改めて実感させられた。ならせめて、僕はココロやケイコさん、ユリさんとの約束を守るべきだろう。

 今、僕ができる最大限のこと。それは多分、文化祭のライブを成功させることになるのだろう。

 

 僕はまた新しいことに気がついた。3週間というのは驚く程にあっという間に過ぎてしまうものなのだ。

 こう感じることができるようになったのも、軽音部に入ったからだと思う。練習は、毎回が失敗と修正の嵐だった。各自練習しては、合わせる。それからダメだった所を指摘しあって、修正。

 たったこれだけ。これだけを3週間やり続けた。そうすると、体感1週間で3週間が過ぎた。

 よって、明日が文化祭本番なのである。

 

 不安しかない。

 その原因のひとつとして、ココロがこの3週間毎日病院に通い詰めだったということもある。確かに心配なのもわかるし、仕方ないと思う。

 だが、これで本番に全力を出せないというのもどうなのだろうか。

 今日も練習を放課後フルでやったのだ。ココロも疲れが溜まってるんじゃないだろうか。

「ココロ、明日本番だけど。今日も病院行くの?」

「うん。なんで?」

 当たり前のように答える。口調も、表情も。何もかもがいつも通りなのだ。だから不安なのだ。

「いや、疲れるんじゃないかなと」

「大丈夫だよー」

 本人も気づいていないんじゃないだろうか。

「ココ…」

「もうそろそろ行くね!じゃ〜、明日は頑張ろ。」

 いつも通り打ち切られる。いつも通りの別れ。いつも通りの笑顔。

 だから、だからこそ怖いのだ。

 僕もカバンを持ってココロがいなくなり、シーンとなった部室の戸締りを始める。

 初めて部室に入った時に見つけた蜘蛛の豪邸は、もう取り壊しが決まっていたらしい。いつの間にかなくなっている。多分、ココロは変わらなきゃ行けなくなる。この部室の姿のように、表面はそのままでも細かいところを現実に合わせて修正しなきゃ行けなくなる。

 不安というなの風船が、僕の心の中で膨らんでいくように感じた。

 この感じはどこかで感じたことがある。けど、この感じは多分当時よりもずっと不快で、ずっと暗い感じがする。

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