第16話 知らないを知る感覚2
黒歴史ねぇ…
確かに黒歴史かもしれないけど、そう思うならなんで消さなかったんだ?僕が拾ってココロに返して、また渡されるまでほとんど1日あったのだ。USBメモリに書いてある内容を把握してなかった、なんてことはないだろう。
…これは、考えすぎなのかな。
「あ、そうだ。ミライくん。」
説明を終えて僕にくるりと背中を向けたココロだったが、思い出したようにまたこっちに向いて言葉を放つ。
動きは忙しいのに、なんで優雅に見えるのか。僕には本当に不思議でしかない。
「さっき言ってた、私のお母さんに会う話なんだけどさ。」
あ、そうだった。USBメモリの話題に持ってかれて忘れていたが、昨日からそこまで決めて話が止まっていた。
慌てて昨日の会話を思い出し、他に忘れていることがないか確認する。
「急かもなんだけど、今週末とか空いてない?」
今週末…今日は金曜日だから…
え?明日か明後日?
「それで、出来れば土曜日とかが…」
「一旦待ってね、ココロ」
僕はため息混じりに、力なく言う。僕が言いたいことなど分かっているだろうに、まるで僕がおかしいように人差し指を頬に当ててキョトンとしている。
「今週末とか、土曜日とかって明日だよね?」
「うん。そうだけど?」
あぁ、ココロの感覚では、僕がおかしかったのだ。それならさっきのココロの反応も納得…は、出来ないな。
「あのさ、人にも事情てもー」
ココロはボクの言葉を遮るように、1歩僕に近づきつつ言った。
「そんなこと言ったって、どうせ暇でしょ?友達いないだろうし」
な…、確かに予定はない。けど、僕にもなにか…無いかもしれないけど。
友達だってちゃんといるいる…遊ばないし、出かけないけど…。
ダメだ、悔しいが反論できない。
「その慌てよう、やっぱり図星だよね?」
「う…」
呆気なく僕は論破される。いや、僕に発言の余地などなかったし、そもそも何も喋ってないのだから議論にすらなってなかったか。
「本当にミライくんは面白いなぁ」
いつもの小悪魔みたい、ケラケラと笑ってから言われた。
ここまでされると、意地になってる自分が馬鹿らしくなってくる。
「はぁ…分かったって。で、どうすればいいのさ」
いつもどうり、微々たる抵抗として不貞腐れたように言ってみる。
いつもどうり、全く相手にされなかった。
「明日の10時に、この学校の向かいにあるコンビニで会おう」
そこのコンビニならいつもと同じように30分で来れるはずだ。なら、家を出るのは9時20分頃にするべきか。
「分かった。持ち物とか、なんかいる?」
「うーん、そうだなあ」
他人の、それも異性の友達の親のお見舞いなど行ったことがない。なにか持っていくべきだろうか。失礼がないようにしないと。
「じゃあね、私の魅力を500字のレポートにまとめて持ってきて」
「は?!いやいや、やだよ」
いつもどうりの反応をしたけど、ココロの顔がいつものように笑っていないことに、僕はしっかりと気がついた。
「冗談だよ〜」
母親の話になると、無理して笑っているように見える。やっぱりココロにとってはとても辛いことなのだろう。
会話を終えた僕は、深呼吸をして楽譜のページをめくった。
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