第4話 ある少年Mからの手紙

 拝啓 2020年の「僕」に


 元気ですか? 2020年に生きている「僕」に向けて手紙を書きます。

まず、最初に言わなければならないことがあります。

 

 今の世界は2020年の頃と比べてずっとずっと良くなりました。本当に沢山のことが変わりました。そして人類は今、かつてないほどの平和な世界を築いています。なので、僕は2020年のあなたへ今の世界の状況について順を追って説明したいと思います。それといくつかのアドバイスも送ります。そして2020年の世界をもっとより良くして欲しいです。

 

 ところで、今の僕は一体何をしているのか興味がありますよね?まずはそこから話していきたいと思います。僕は今アメリカで環境科学の研究をしています。僕は今から8年前、SDGsで策定されていた二酸化炭素削減運動に関わるプロジェクトに参加したのをきっかけに環境問題に興味を抱き、アメリカの大学に環境学を専攻として進学をしました。そして今、日本、中国、ヨーロッパ各国の研究チームと組んで、排気ガス量をゼロにして再生可能エネルギーへ100%移行する為に必死で研究を重ねています。


 二酸化炭素削減はどうなったか疑問に思いましたか?そうです。僕たちは2020年の頃に達成できないだろうと思われていた2030年までの二酸化炭素の45%削減を今年、成し遂げたのです。僕たち一人一人のたゆまぬ努力、意識的な活動がなければ達成は困難だったに違いありません。


 しかし、恐らくあなたが今直面している地球環境問題はとてつもなく深刻でしょう。このまま一部の団体や個人に問題を丸投げしていてはSDGsの達成どころか地球温暖化はますます進み、海は汚染されてしまい、地球の生物多様性は減少して絶滅していく生物が増え、異常気象で生活が脅かされて文字通り最悪の未来になってしまいます。


 だがまだ間に合う。みんなが現状の深刻さを理解して協力し合い、日々のちょっとした努力、例えばエアコンをなるべく使わない、電気自動車に乗り換える、プラスチック製品の使用を最小限に抑えるなどのことを実践していけば必ず良い未来はやってきます。これが2030年の僕からのアドバイスです。

 

 僕の世界の状況についてまだ話していませんでしたね。先ほど話したようにこの世界はとても平和で希望に満ちています。様々なライフスタイルが生まれて、みんながみんな自分のやりたいことを追求できるようになりました。もう誰も生きづらい社会だなんて言いません。僕はこんな今の世界がずっと続いて欲しいと思います。

 

 技術面でも大きな変化がありました。人工知能が飛躍的に進歩を遂げて、僕たちの仕事の大半はすでに人工知能により置き換わってしまいました。しかしそのお陰で、ベーシックインカム制度が拡充されて僕たち一人一人皆人工知能が生み出す利益を平等に享受できるようになりました。今ではもう貧困なんてものは存在しません。


 僕は今とても幸せです。この幸せがずっと続いて欲しい。その為にも、これからも僕はより良い世界のために努力し続けようと思います。


 最後に、ここまで読んでくれてありがとう。そしてこの10年後の素晴らしい世界を実現できるよう、今の「僕」ができることを最大限にやって欲しいです。10年後から見ています。


 2030年の僕より

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