第3話 激励
夜の通勤電車、煌々と照らされる窓に映し出されるのはスマホ片手に座っている、顔のない大人達。東京の塾に通っている僕はこの生気のない乗客達と共に帰路につく。こんな時、僕にはいつも思う事があった。
この人たちは幸せなのだろうか、と。
勤勉、と称されることが多い日本人は同時にストレスを内に溜め込みやすいと言われる。そしてその発散場所が電車内、ゲームや漫画、映画鑑賞だったりする訳だ。
仕事を頑張ったから。今日一日のご褒美として。とスマホを取り出すのならば、何故そんなに退屈そうな、死んだ魚の目をしているのだろう。それは、労働経験の無い僕が分かりっこもなく本人にしか分からない。だが当の本人はその事に気付かない、いや気付けないのだ。
「知らぬ間に身も心も溶けだされて社会に隷属してしまっている」大人達。
世間知らずの一高校生である僕には彼らはそんな風に見えた。と同時に胸の奥からこみ上げてくる寂寞があった。果たして彼らの中で誰が、自分が高校生の時に将来こうなると想像していただろうか。そういう僕も10年後にはそうなってしまうのではないか。こう思うと、何故だか虚しさを通り越した悲痛、なる感情が胸の内に芽生えてくるのを感じる。
僕たちは変わらなければならない。だがそれ以上に変わらなければならないのは今の時代を担う彼ら大人自身だ。そんな彼らに僕はあえて生意気な言葉を贈る。
「しゃきっとせいや!」
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