第2話
「『異例者』とは通常卵子に入る精子が1つですが、そこに複数個入ってしまった事により、人とは異なる力を得てしまった者の事です。その力を得る事はは耐えられない事が多く、男が多いのですが稀に女がそのまま成長できてしまう事があります。それが『異端者』です。精子の入る数によって能力の数は増え、ダブルやトリプルが生まれる事もあります。」
あんな事があった次の日、私は昨日の今日にも関わらずSクラスに移動になっていた。
今はSクラスの午後の特別授業中。今話している
なんでも理事長の大事な人なんだとか。
ちなみに先生は能力は特になく、一般人らしい。
「佐藤先生、Sクラスでは午後は何をしているんですか?そんでもって、先輩4人は居ないんですね。」
「良い質問ですね。Sクラスでは、自らの能力をこれからどう使っていくのか、そして自らを守る術を学んでいます。外で課外授業をしたり、学生寮の地下にはそれぞれ1人1部屋実験室があるので、そこで自分の能力を伸ばしたりしていますね。ちなみに上の4人は今ごろ自由に過ごしてるんでしょうね……本当、午後はほぼ自習も同然だからってサボるんだよ……あはは」
あ、これ地雷踏んだやつ?てか先輩らって今サボってだんだ。
まぁ現在進行形で水琴くんも爆睡してるから受けてるの私1人だけど。
「え、えーと、じゃあ課外授業って例えばどんな事してるんですか?」
「そうですね。皆さんが将来どんな職に就くか分かりませんから、この学校ではこの学校でしか出来ない事ばかりを体験してもらっていますよ。例えば、国内のテロ組織の殱滅とか法で裁けない罪人の暗殺とか。」
うわぁー、これ違う意味で地雷きたぁー。殱滅とか暗殺とか教師の口から聞こえてきたよ。空耳であって欲しいー。
私達が午後も学生生活を謳歌してる間に裏社会を闊歩してたの?確かに普通の人と同じ就活はどこでも出来るけど。
確かにこの学校でしか経験出来ないだろうけど。大丈夫か?この学校。
どーしよ。何聞いても地雷な気がしてきた……
「あ、涼介せんせー来てたの?」
そんな時、2階の自室から紅先輩が降りてきた。マジ、ナイスタイミング!
そーいえば、私服って初めて見たなぁ。昨日は学生寮に戻ってきたばかりだから制服だったのか。なんかバッグプリントのシャツに黒のパンツで大人っぽい。
紅先輩らしさが一切ない。眼鏡もしてるし。ん?眼鏡?
「早乙女くん、ちゃんと敬語を使いなさいと何度言えば……はぁ、まぁ良いです。今ちょうどお2人に午後の時間の過ごし方について説明していたところなんですよ?ついでに今年の実験室の使用決めもしちゃいましょう。皆さんわ呼んできてください。」
ため息混じりに佐藤先生は水琴くんの正面のソファーに座った。
「はいはーい、ちょっと待ってて。杏奈ちゃんは理樹達呼んできてくれる?」
そう言うと紅先輩は相部屋の千歳先輩を呼びに行った。
私も一堂先輩と椎名先輩を呼んで来ようかな。……水琴くん寝てるし。
佐藤先生にめっちゃ起こされてるけど、全然ピクとも起きてないし。
ちなみに、部屋は学年同士で相部屋。男女で部屋が分かれたりしてないんだよね。本当にこの学校大丈夫なのかな?
私が2人を呼んでリビングに戻ると紅先輩達はもう戻ってきていた。
今度は紅先輩が頑張って水琴くんを起こしている。すると、ようやくむくりと起き上がった。
「ん……朝?」
頭はまだ寝てるっぽい。でも、可愛いなぁー低血圧なのかなぁー。
お人形さんだよ。私が襲っちゃいそうだよ。まぁ冗談は置いといて、
「水琴くん、もう3時だよ?佐藤先生、全員呼んで来ました。それで実験室の使用決めって何ですか?」
私が佐藤先生に尋ねていると、水琴くんにお茶を渡していた椎名先輩が突然私に抱きついてきた。
「あーちゃん、それはね。実験室はいくら頑丈に造られてるとは言え、さすがに私達の力が暴走したら危ないでしょ〜?だから自分が使える部屋を力の危険さで決めてるの。危険な分だけ地下に下がってくわよ?降りるの面倒なのよねぇ〜」
椎名先輩がグダリと私にのし掛かる。でも体重を全然かけていないのか、全く重くはない。
「なるほー。ってそれより、あーちゃんってもしかして私の事ですか?」
後、自分のセリフを取られた佐藤先生が部屋の隅っこで座り込んじゃったんですけど。
今にも部屋の隅にキノコ植えかねない程にショボーンってしちゃってるんですけど。
「杏奈だから、あーちゃん。可愛いでしょ?え、てか、なるほーってまったりしてて超可愛いんだけど。もう一回言って?」
椎名先輩がキラキラさせた目を私に注ぐ。
あーちゃんって呼び方は可愛いけど、自分の事だと思うとなんか恥ずいな。水琴くんの事もひーちゃんって呼んでたっけ?
「椎名、そんな事より実験室決めをするんでしょう?勝手に話を逸らさないでください。」
「まぁーまぁー良いじゃん?可愛いのは俺も賛成やし?とにかく、火の俺と風雷の瞬が1番下、実害のない未来ちゃんと杏奈ちゃんが1番上。で、良いんとちゃう?」
「じゃあ、俺と翡翠が真ん中っすね。了解です。翡翠ー、俺ら一緒だとよ。よろしくな。」
へぇ、紅先輩ってチャラいくせに意外と頭は回るんだ。それに周りもすぐ納得したくらいに信用もあるっぽい。
なんか意外かも。服の事といい、眼鏡の事といい、こっちの先輩が本物なのかな?
「よしよし、決まったみたいですね。さすがは生徒会長です。その調子で先生に敬語を使ってくれると良いのですが……そんな事はとりあえず置いておいて今年はせっかく女性がいるんですから、そのまま生徒会の役割も決めてはどうです?」
あ、佐藤先生がいつの間にか復活してる。
ってちょい待って?Sクラスのメンバーがそのまま生徒会メンバーになるのは知ってるけど、チャラ紅先輩が会長なの?マジで言ってる?
確かにカリスマとか行動力は抜群なんだけどさ!あれ?会長の素質はあるのか。
「そーだねー。今までは会長さえ決まってれば何とかなってたし、役割とかは特に決めてなかったかも。せっかく杏奈ちゃんが入ってくれたんだし女子の副会長はもちろん杏奈ちゃんだよね!」
うん、素質以前の問題だった。
てか、私が副会長なの?1年なのに?
「なら、僕は会計をします。男子の副会長は一堂、貴方がしなさい。」
あ、誰もノーコメントなのね。私の脳内ツッコミを見抜いてくれる人は居ない訳ね。
オーケイ、オーケイ。
「え、俺?俺は別にいーけど、俺が副会長で良いんすか?」
「バカねー、理樹はバカなんだから会計務まらないでしょ〜?それに、理樹の字は本人にしか読めないわよ。副会長が妥当。」
「なっ!バカって連呼すんじゃねーよ!それに会計くらいの計算は出来るぜ?字はまぁ自覚あるけどよ。」
「25×25……」
ようやく完全に目が覚めたのか水琴くんがぽつりと呟いた。
ちゃんと目覚めててもそのテンションなんだね。これは低血圧あってもなくてもマイペースなのかな?
まぁ可愛いから許す。どうかそのまま成長してくれ。
「え?えーーーっと、あー500くらい?」
マジか。
他の先輩達も頭抱えてる。
水琴くんは……うつらうつらしてる。また寝そう。
「一堂先輩、625ですよ。ちなみに、500は25×20です。一堂先輩ってバ……計算苦手だったんですね。Sクラスが生徒会になるのであって、学力重視じゃないですもんね。」
「ちょっ……涼介せんせー!1年が2人して酷くない!?これ、立派なイジメ!」
「違いますよ。一堂くんが立派なバカなだけです。これはこれは本当にテストまで楽しい日々になりそうですね〜」
あぁ、一堂先輩、乙です。
私も勉強頑張ろ……
でもこの学校の平均ってどのくらいなのかな?
偏差値は公開されてないし、入学試験も点数教えてくれないんだのね。
受かったってだけで、学年1位なのか学年最下位なのかって結構違うよ?
まぁ1位は絶対ないから言い過ぎかもしれないけどさ。
とりあえず初回は全力で頑張って様子見かな。
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