第20話
ベッドに横たわる少年を眺める。撃たれたという肩の怪我、そこから流れていた血は止まっていた。
少年の額には玉のような汗が浮き出ている。
呼吸は荒く。苦しそうだ。
……これは過ちだろうか。
たとえ、彼が望んだことだとしても地獄に導いてしまったのは他ならぬ私なのだから。
彼はまだ若い。そして、終わりがあった。
けれど、終わりは無くなった。
私が失くしてしまったのだ。
彼が望んでも、その願いを跳ね除けることは出来たのに。
……でもそれで彼が離れてしまうのが怖かった。彼の存在は短期間で、ここまで大きくなってしまっていた。
彼ばかりは失いたくなかった。
襲って血を吸い、隣に居た者の正体が化け物と知っても彼は隣に居てくれた。それが言葉に言い表せない程、嬉しかった。幸せだった。
そして、愛してくれた。
これからずっと、永遠にいられる。
そんな事実にときめいている自分もいる。
後悔と期待が心の底でミックスされ、まだら模様の感情が渦巻く。
彼の顔を見る。そして、彼の手を握った。
温かい。
それは間違いなく、人間の物だった。
手を握られている。
この部屋にいるのは、俺とエリーザさんだけだ。手を握っているのは、彼女ということになる。
……とても温かい。
たとえ、不老不死だろうが彼女は生きているのだ。温かいのは、当たり前だ。
「――俺、生きてます?」
「……生きてるよ。……だって、こんなにも温かいんだから」
先程まで苦しかったのに、それが嘘みたいに清々とした気分になっている。
生き返るってこんな気分なのだろうか。
頭を振り、ベッドから起き上がった。そして、彼女の手を取ろうとした瞬間。
ガンガンガンと三発、銃声が鳴った。
「……あの男か」
「……昨日はチャイムを鳴らしたのに」
金属戸が軋みながら開く音がした。
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