第17話
十分程の時間だったが、一晩中吸われているようだった。互いに頬は涙で濡れているが、気分はスッキリしている。
エリーザさんは僕の首筋から歯を抜くと、ゆっくりと息を吐いた。
「…………伴侶になる方法は、君が私の血を飲むこと。それしかない」
「……映画とかだと、血を吸われた人間は吸血鬼になってましたけど……なれないんですか?」
彼女はかぶりを振る。
「……私が血を吸った人達は蘇る事は無かった」
「…………じゃあなんで、方法が分かるんですか?」
「……分からない。でも、今は分かる」
そう言って立ち上がるとエリーザさんは言った。
「ありがとう」
僕も立ち上がって彼女に微笑みかけた。
「……明日。私の家に来て」
「……分かりました。……危ないし帰り、送りますよ」
「ありがと」
玄関を開ける。近くではまだパトカーのサイレンが鳴っている。まだあの男は捕まっていないのだろう。
ここで僕は、一つの忘れ物に気が付いた。
「……自転車忘れた」
アレには防犯登録がしてある。警察が見つければ、僕の手元には戻ってくるだろうが事件との関連性を疑われるし、あの男の手に渡ればもしかすると住所がバレるかもしれない。
どっちにしてもいい事は無い。
途端に現実に引き戻されたが、それも僕らしいと言えば僕らしい。
乾いた笑いが自然と漏れた。
固く手を繋ぎ、僕は彼女を家に送り届けた。
家に帰ると、玄関先には僕の自転車を持った制服警官が二人いた。僕の名前を聞きその問いに僕がイエスと言うと、顔色を変え様々な事を問いただしてきた。
適当に答え、渋い顔した警官を追い返す。
そのまま自室のベッドに倒れ込む。彼女の残り香を嗅ぎ、僕は眠りについた。
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