第3話

 あの後、僕は魂を抜かれたような顔をして街を彷徨った。

 愛機である自転車を置いたまま、トボトボ歩き回った。

 周りの景色は、古ぼけた写真のようなセピア色に見える。ふと顔を上げる、そこにあったのは通っていた高校だった。

 

「まさか、ここに辿り着くなんて……」


 自嘲気味に呟く。また居場所が無くなってすぐ、最初に居場所を失った場所に来るなんて悪い冗談もいいところだ。

 ――――高校に入って、そこそこな生活を送っていたはずだ。

 何が狂って、壊れてしまったのだろうか。

 何が原因で僕はイジメられるようになったのだろうか。

 そんな事ばかり考えていた。

 けれど、一向に答えは出ないまま時間だけが過ぎていった。

 人間の心は、止むことを知らない蔑称と侮蔑の嵐に耐えられなくなってくる。大多数の者は、自らに非があると思い込み、己を追い詰めてしまう。

 そしてその末路といったら、その身を破滅の流れに任せることだ。

 だが僕はイジメっ子の粘ついたいやらしい表情に、怒りに任せた拳を叩き込み全てをぶちまけた。

 自死なんて、負け逃げだ。そんなつまらない理論を押し通した。死にはしなかった。

 ただ破滅の行き先を、数ミリ単位で変えただけだ。

 こうして僕は居場所が無い学校から逃げ、僕は不登校になりこうして腐っている。

 

「何やってんだ」


 溜息を一つ。だが、閉じ込めた記憶が引っ掛かった。


『学校くんなよ』


 これまでに言われた暴言の一つ。本物の悪意と拒絶が詰まった、実弾。


『…………こないで』


 さっき言われた拒絶の言葉。これまでの言葉とはまるっきり違う。

 ──空砲。弾の形だけを取った、偽物。

 勘に近い憶測を引っ提げ、僕は来た道を走った。

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