また下血

 下血で年末に入院して、大晦日に退院した。

 しばらくは血が止まっていたものの、1月4日再び下血。

 ポータブルトイレのバケツの中が血で赤い。

 量は年末に比べて6分の1と言う感じ。

 そう、年末の時は1ミリも透けてなかったのが、一応底まで見える。

 表面よりは、底の方が血が濃い。

 ポータブルトイレのバケツには、あらかじめ1リットルほど水を張っているのでこうなる。

 量的に、少し様子を見ることにした。


 本人は、熱も痛みも無いのでケロッとしている。


 5日、出血量が減った。

 もう止まるかなと思った。


 6日、4日よりも量が増えた。

 ただ、年末の下血は、血そのもの。

 塊も血が固まった物だった。

 今回は、たくさんの血を含んだ便である。

 だからポータブルトイレの水の中で、便から血が滲みだしていると言う感じなのだ。


 7日、6日よりも出血量が多い。

 ポータブルトイレの中の赤が濃い。

 15日には、診察予約が入っている。

 そこまで待つかどうか悩んだが、

11日、月曜日が祭日な事と、

担当医の外来担当日が週に二回な事、

そして6日に入院費の請求書が届いて、支払いで病院へ行く事を合わせて、

診察日を一週間繰り上げて8日にしてもらう事にした。



 四万円ほどの支払いを済ませ、消化器内科の外来受付で事情を話し、予約の変更をしてもらった。

 その日のうちに担当医から電話がかかって来た。

 空き時間に入れてもらった予約は午後だった。

「午後からの診察だと、点滴をしていたら遅くなるので、九時半に診察しますから、それまでに来てください。

診察をして、採血をして、点滴をしている間に結果が出ますから、それを見て輸血をするか決めます。

それでいいですか」

 それでいい。

 担当医は割と気難しい医師である。

 消化器内科の範疇からは一ミリたりとも出ない。

 消化器内科の範疇は、きっちりやると言うタイプなのだ。

 消化器内科の医師としてのランキングは、私には分からない。

 だからこちらも、消化器内科の範疇を出ないように、気をつかう。


 8日朝、ポータブルトイレの清掃をする。

 7日の23時ごろに出た便が沈んでいたが、そのあと便は出ていないらしい。

 そして、血は出ていなかった。

 とりあえず支度をして病院へ行く。

 その間父は、ほったらかしである。

 私の体が一つしかないと言うのは、こういう事なのだ。


 検査の結果を見てからと言う話だったのだが、当日診察を診けたら血液検査の結果を見るまでもなく、担当医師は輸血も決めていた。

 点滴前、点滴後の診察内容を一まとめにすると、下血で今すぐどうこうする必要はないという事だった。


 もちろんこれは、大腸の内視鏡検査をはじめ、いくつかの検査をした結論である。

 もし血便が出たら大腸がんの疑いがある。

 明らかに肛門が切れて出血しているのでなければ、医院で紹介状を書いてもらって、大腸の内視鏡検査を受けよう。

 そうでなくても、五十歳になったら市町村から大腸癌の検査の案内が来ると思う。

 来たら検査を受けておこう。

 これは便潜血と言うもので、ごく微量の検便みたいなものだ。

 二回やって、一回でも血の反応が出たら、内視鏡検査の紹介状が来る。

 来たら受けよう。

 前癌腫瘍や初期の癌なら、内視鏡で取れる。

 開腹手術になったら大変なのだ。

 肛門に近ければ、人工肛門になってしまう。

 そういう意味では、痔でも血が確認できたら大腸がんの検査は受けておいた方が良いかもしれない。

 血液検査の腫瘍マーカーなど、検査方法はいろいろある。


 さて、診察だが、母はベットに横に寝かされ手袋をした医師に、お尻の穴に指を入れられた。

 手袋に付いて来た僅かな便で、出血を確認するが、どうやら出血は止まっていた。

 今後については、また出血が有っても、処方された止血剤を飲んで血が止まれば、次の診察は予約どおりで良いと言われた。

 止血剤を一週間飲んでも血が止まらない場合は、処置をしてもらうために予約外で外来に行く程度で良いのだ。

 年末からの下血騒動は、とりあえず一安心出来た。


 それでも点滴と輸血はある。

 診察室を出たら、処置室に行くように言われた。

 血液検査はなくなったのかと思ったが、点滴の針から採血するのだと聞いて、納得した。

 針は一回で良い。

 何回も刺したり抜いたりされては、患者は大変だ。


 さて、点滴と輸血で四時間かかる。

 点滴が始まってすぐに、私はいったん家へ帰った。

 母の昼食後の薬を取りにと、父の洗濯物を干すためだ。

 洗濯は済んでいる。

 自分の昼食も済ませ、ペットボトルの水と麦茶、それにくまさんの飲み口をもって病院に戻る。

 病院の売店で母の昼食も買った。


 母は前夜寒くて眠れなかったらしく、点滴中よく眠っている。

 年末から読めずに溜まっていた漫画の月刊誌を三冊消化した。


 遅めの昼食の後、前日行ったデイサービスの話を聞く。

 母が行きたいと言ったので、お風呂は体を洗う程度、リハビリはお休みして、一日のんびりしてもらうという事で、デイサービスに行ってもらった。

 家にいるよりデイサービスの方が、暖かいはず。

 寒さも出血の原因だと思う。

 若くても寒いと余計な力が入るモノだ。

 力むのはよくない。


 さて、そんなデイサービスのお迎えの車を私が見送った後のできごとだった。

 ウェルカムシートで助手席に乗っていた母にデイサービスの職員は言ったと言うのだ。

「きれいなお嬢さんですね」


 ……………。

 マスク生活は、失うものが多い。




 何人介護になろうが、自分の体は一つしかない介護離職者たちにベーシックインカムを。

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