ケアマネージャーで考えてみた 2

 前回、ケアマネージャーについて少し調べてみて、個人的にはもやもやだけが残った。

 でも、在宅介護保護責任者にも、ケアマネ正確には介護支援専門員の受験資格を与えることは、社会的にも意味があるのではないかと思い、もう少し調べてみた。


 ちなみに、在宅介護保護責任者と言うのは、私が勝手に作った言葉だ。

 在宅介護と、育児放棄などのニュースで聞く「保護責任者遺棄致死」と言うモノの、法的立場の「保護責任者」を合わせた言葉だ。

「お前、途中で投げ出したら、刑務所入れるからな」

 と、介護で国からヘッドロックされている立場の人たちの事である。


 介護支援専門員資格は、国家資格ではないらしい。

 国家資格にするべきだという意見がある程度なのだとか。

 ガイドラインは厚労省が出しているものの、所管は各都道府県になる。

 調べていくうちに、なんか制度設計自体が利用者不在な気がして仕方がない。

 一部で不要論、資格の廃止説がささやかれていても、仕方がないように思う。


 そもそも、在宅介護をするにあたって、必ずケアマネージャーが居なくてはいけない、と言う訳ではないらしい。


 私は違う意味で、いずれケアマネージャーの仕事はなくなると思っていた。

 利用者として見るケアマネージャーの仕事は、最もAIが得意とするところなのだ。

 ビッグデーターを使われた日には、人間が足で集められる情報では、太刀打ちできない。

 口コミサイトだけでなく、SNSなどインターネット上にある情報から、特定の事業所の書き込みを集めて、分析をする。

 さらには事業所の経営状態、人員の構成、スタッフの給与、福利厚生、勤務実績、なども計算に入れれば、何年以内に、どういった問題が起こるかまで、計算できるはずなのだ。

 それを全国の事業所で出来るのだ。

 数字の扱い、料金の計算だって、コンピューターの得意とするトコロだ。


 いや、まて、私たちが病院にかかって料金を払うのに、医療マネージャーが間に入っているなどという事はない。

 病院には医療事務の資格を持った人が居て、計算はその人たちがしてくれている。

 請求書どおりに支払いをすればいいのだ。

 医院を選ぶのだって自分でする。

 デイサービスの事業所、福祉レンタルなど、契約は直接利用者と業者の間で結ばれる。

 介護保険の計算をして、保険請求や、利用料の請求をしているのは、業者だ。

 必要だとしたら、介護保険事務と言う資格だろう。

 何かますますケアマネージャーの存在意義が分からなくなってきた。

 

 おすすめの事業所、利用者とデイサービスなどのマッチングは、ほけんの窓口みたいなモノの方が良いのではないか。

 紹介してほしい事業所がマッチングに必要な情報を提供して、利用者の要望と照らし合わせば良い。

 それ以前に、利用者が知りたい事業所の情報を一覧にして、市役所のホームページの福祉のコーナーに掲載されていればそれでいい。

 介護認定を申請した時に渡されるデイサービス等の事業所の冊子には、事業所名と住所、電話番号しか載っていなかった。

 そもそもそれが、不親切すぎるのだ。

 在宅介護支援事業所、ケアマネージャーの事業所の冊子には、広告まで載せているのにだ。

 むりやり、ケアマネージャーの仕事を作っているようにしか思えない。

 利用者のニーズに合わせて、事業所を二・三ピックアップできる程度の情報が載っていれば、それでいいのだ。

 どんな情報が欲しいのかは、利用者達から聴き取りをして、まとめれば済む話だ。

 気になる事業所が見つかれば、電話して聞いてみる、内覧させてもらう、お試しさせてもらう、そして選ぶ、それだけだ。

 少なくとも「僕知りませんでした」と言われるよりは、よっぽどましだ。


 母に購入するポータブルトイレの1割負担について、ケアマネージャーが作成した書類を持って、福祉用具の業者が、市役所に申請を出しに行くと言っていた。

 そもそもケアマネージャーが書類を作成する必要がどこにあるのだろう。

 ポータブルトイレは、リハビリ入院していた病院から提案があって、購入することにしたものだ。

 医師の意見書を持って、市役所に申請を出せばそれで済む話なのだ。


 事実、健康保険で1割負担になった、母の圧迫骨折用のオーダーメイドのコルセットは、私が手続きをした。

 領収書など、病院で渡された必要書類を持って窓口へ行き、出された申請書に記入して終了した。

 ただこの場合、いったん全額の五万五千円ほどを支払い、後で給付される。


 ポータブルトイレも、福祉用具業者から、

「一旦全額を払ってもらう方法と、支払いをはじめから1割分だけにする、方法があります」

 と言われた。

 一時的にでも六万五千円ほどの現金が、手持ちのお金から減るのは、リスクを感じたので、初めから一割負担の方を選んだ。


 でも、そんな事はケアマネージャーが出てくるまでもなく、制度上の問題なのだ。

 業者の見積書と、医師の意見書を持って手続きすれば、窓口で、後日郵送にしても、福祉用具業者が保険請求できる証書を発行してくれれば、証書と一割分の現金で購入できる。

 ただ、それだけの話なのだ。


 ストマーの購入補助の申請も、身体障がい者の手帳を持って窓口へ行けばいい。

 オムツ購入の補助も、要介護度の認定書を持って窓口へ行けばいい。


 少なくとも私が介護している範囲で、医師に依頼する書類はあっても、ケアマネージャーに作成を依頼しなければならない書類はない。

 制度が無理やり作らなければ、必要ないのである。


 不必要な人間が関わる事で、在宅介護保護責任者の負担は、余計に増える。

 これが結局、介護支援専門員の制度設計が、利用者に寄り添っていないと思うゆえんなのだ。


 また、介護支援専門員の資格が廃止されると囁かれる根拠の一つに、利用者の一割負担説がある。

 今は全額保険負担だ。

 それが利用者も一割負担をすることになった時、ケアマネージャーを必要としない利用者が大半を占めるだろうと言う予想がある。

 それこそが、介護支援専門員の制度設計が、利用者に寄り添っていない証拠なのだ。


 介護支援専門員の受験資格を得るには、国家資格である医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士、管理栄養士、精神保健福祉士と、

生活相談員、支援相談員、相談支援専門員、主任相談支援員、などの資格を持っていて、五年以上の実務経験を持っている者となっている。


 まずこれらを見て、介護と言っても老人介護や、障がい者介護など、介護がひとくくりになっていると思う。

 ざっと見ただけでも、門外漢に口挟まれたら大迷惑だと思った。

 介護支援専門員と言っても、老人介護支援専門員や、障がい者介護支援専門員など、それぞれに分けるべきだと思う。

 それと、今のその資格の仕事を頑張ってくれ、と思う資格もある。


 私が思う介護支援専門員の仕事と言うのは、そういう専門職と、利用者のつなぎ、手続きの代行でいいと思う。

 一見今のケアマネージャーの仕事と同じ様に聞こえるが、少なくとも無理に作る仕事ではない。

 デジタル庁も出来る事だし、本来すべての事は、介護している当事者が、問題なく自分で出来るように、制度設計をしなくてはいけない。

 その上で必要なのは、老々介護など支援が必要な介護者へのサポートなのだ。

 情報を無理やり囲い込んで、介護支援専門員の仕事を作る事ではない。


 そうなってくると、実際に在宅介護をした、経験者の知識と経験は有効なスキルになるはずなのだ。

 利用者に寄り添う制度設計になった介護支援専門員の受験資格に値するスキルになる。


 そして、在宅介護の負担で、介護離職を迫られた単身者、非正規労働者、その他の介護離職者の、その後の救済にもなる。

 介護離職になれば、所得がなくなる。

 介護している親の年金で食費を賄う事になるのだ。

 離職で、厚生年金から国民年金になる。

 その国民年金の掛け金も払えないので、免除措置を受ける。

 ただでさえ、それだけでは生活が出来ないと言われる国民年金が、免除を受けることで最大半減するのだ。

 そして、介護が終わるという事は、親の年金支給も終わることを意味する。

 介護をしていた者も、その頃には高齢で仕事を探すにも募集がない。

 年金支給年齢になっていても、その年金支給額が少額で、生活が出来ない。

 生活保護になるしかない。


 これが、就職氷河期の世代が在宅介護になった後、生活保護が爆発的に増える現実だ。


 在宅介護で資格の受験資格が得られて、自分の在宅介護が終わった後に、その資格で在宅介護になった人の支援をする。

 在宅介護中に培った知識と経験で、在宅介護のサポートをして収入を得る。


 結局それが、国の社会保障費削減にもつながるのだと思う。


 国の行く末にも憂う、介護離職者にベーシックインカムを。

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