ケアマネージャーで考えてみた

 今、母はどこに通所するのか決めるために、お試しデイサービスの最中だ。

 あろう事かケアマネージャーは、その一番初めに、市内で唯一虐待事件があった事業所の予約を取って来た。

 その話は、以前にも書いているので、詳しくは書かないが、それがあって事業所の選択と調査は自分でする事にした。


 まず、要介護度認定を申請した時に渡される冊子に、利用できる事業所の一覧が載っている。

 事業所と言っても二種類ある。

 いわゆるデイサービスと、デイケアだ。

 デイケアとは、理学療法士と作業療法士も居て、病院で行っていたリハビリを継続して行える事業所だ。

 利用には、医師の診断書を必要とするらしい。

 その診断書は、リハビリ入院をしていた病院の担当医に、すでに依頼してある。

 なので、デイケアを中心に体験を組む。


 中心と言うのは、デイサービスの事業所でも理学療法士は居て、簡単なリハビリもやっている事業所も有るという事なのだ。

 だが、渡された冊子にはそこまでは書かれていない。

 ところが、幸か不幸か母は二人目、一人目の父で得た情報や、情報源がある。

 母には初めに、父が機能維持を目的に利用している、理学療法士が居るデイサービスに行ってもらった。

 もちろん父とは別日だ。

 母は、父と一緒にデイサービスに行くことは、完全拒否である。

 ちなみに、ケアマネージャーが最初に予約を取ってきた事業所は、キャンセルした。

 復活させる予定はない。


 次に情報源だ。

 訪問介護、訪問看護と言った訪問系の人は、介護関係の中で、おそらく一番の情報通だ。

 訪問先の利用者がどこの事業所を利用していて、どういう評価をしているのか知っている。

 すべてを赤裸々に話してくれる訳では無いが、選択のサポートはしてくれる。


 あとは地理的な条件でピックアップした事業所のホームページを検索したり、有れば口コミも見たりする。


 最終的には、直接事業所に電話をして、質問をぶつけてみるしかない。

 ただ、たいていケアマネージャーを通して欲しいと言われる。

 それが出来ればこんなめんどくさい事はしていないのだ。

 とりあえず、聞いておきたい事には答えてもらう。

 女性の作業療法士は居るか。

 母が希望している事は、確認しておきたい。

 ウェルカムシート、助手席が外に出てくる送迎車はありますか。

 どうも、車椅子で車に乗せられて送迎されるのは、距離があるとお尻が痛くなるらしい。

 距離は、私が歩いて行って、十分と掛からずに到着できる、それが限界値だ。

 母にとって必要な条件などを聞き出したら、事業所の希望もあるので、後はケアマネージャーに投げる。


 後日、予約を取りましたと、ケアマネージャーから電話がかかって来る。

 食事の用意で忙しい時に電話がかかって来る。

 おかずの品目は多い、父母合わせて十品目は軽く超える。

 父は、タンパク質を取らせなくてはいけないが、カロリーは取らせたくない。

 父に卵は外せないが、母は、卵アレルギーで食べられない。

 もう、全くの別メニューなのだ。

 そんなさなかに電話がかかって来る。


「今回は、丸一日体験だから昼食代はいくら、全部でいくら用意するの」

「聞いてませんでした。聞いて折り返し電話します」

電話がかかって来る。

 費用は分かった。

「その日お父さんもデイサービスに行く日なので、お迎えは何時ごろに来るの」

「言ってませんでした。聞いてませんでした。また聞いて折り返し電話します」

 調理中の忙しいなか、一問一答一確認折り返し電話が、六回ほど続いた。


 ふと思ったのだ、後何をすればケアマネージャーの仕事のすべてなんだろう。


 セルフケアマネージャーもありなんじゃないかと思った。

 人が間に入ることで、煩わしいこともある。


 ケアマネージャーの報酬と言うのは、利用者からではなく、国保連合会と言う所から出ているのだ。

 直接的には公的なところから出ているのだ。

 だったら、今後就職氷河期の、未婚の非正規労働者が在宅介護を看るようになって、介護離職者になるケースが増える。

 セルフで出来るのなら、その報酬を所得にすることもできるのだ。


 ただ、現行では、それは無理だった。

 まず、ケアマネージャー、正確には介護支援専門員の資格を取るには、介護福祉士や看護師など介護に係わる資格を取って、五年以上の実務経験がないと、受験資格が得られない。

 まずこの時点で多くの在宅介護保護責任者は、対象外なのだが、ケアマネージャーも人手不足だと聞く。

 だったら、何年か在宅介護をしている家族にも、受験資格位は与えてもいいのではないかと思う。

 事業所ではそれぞれの資格を持った専門家が、資格で出来る介護、作業をする。

 家では専門関係なく、必要な作業を横断的に全部するのだ。

 介護の世界で、唯一のマルチタスクプレイヤーなのだ。

 当事者と言うスキルも認めていいと思う。

 それでも得られるのは、あくまでも試験が受けられるという事だけなのだ。

 介護支援専門員の資格は、試験に合格しないとえられない。

 報酬を得るのであれば資格は必要になる。


 現行法をすべて無視して、仮に資格が取れたとしよう。

 自宅を事業所にして、セルフケアマネージャーとして、両親の分だけケアマネージャーの仕事をするとしよう。

 それで得られる報酬は、ウチと同じ要介護度3二人として、だいたい二万六千円と言ったところだ。


 要介護度1と2が千点、要介護度3、4、5が千三百点で、金額にするのに×10。

 高時給の工場派遣の夜勤一日分位が、月の報酬だ。

 だから実際のケアマネージャーは、30人位は受け持っているのだと思う。

 そこから考えて、セルフケアマネージャーで増える仕事量は、多くはないだろう。

 それにしても微妙だ。


 自分で支払っていれば倍の五万二千円だが、支払ってはいないので額面のまま二万六千円。

 ケアマネージャーが優秀だったら、自分でしようとは考えない。


 思いついて、調べてみて、何だかモヤモヤだけが残った。

 遊びで、ユーザー車検をしたときは、楽しかったのに。


 そんな介護離職者たちにベーシックインカムを。

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