ポータブルトイレ準備中

 世の中には「ポータブルトイレ」なるものがある。

 一見椅子、座面を上げると洋式便器で、主に寝室に置いて使う、介護用品である。


 母は、入院中に病室で使っていた。

 一度は家では使わないと言っていたのだが、やっぱり有った方が良いという事になり、購入することにした。

 そこで参考になるのは、よその介護日記である。

 お隣さんの介護日記の記事を思い出した。


 お隣さんとは、

桑原”無色”賢一 著

「介護者ラストスタンド(旧ダブル鬼介護日記)」

の事だ。

 私が勝手にお隣さんと思っている。

 理由には、「カクヨム」で「在宅介護」と検索したら、ウチのとお隣さんの二件しかヒットしないという事もある。

 ここでリンクは張らないが、レビューも書いているのでそこからアクセスも可能だ。

 ネタは被らないようにはしている。

 お隣が先人なので、かぶると私の存在価値がないのだ。

 お隣の方が更新も早い。

 ウチのタイトルは「~愚痴の一つも言ってみる」だ。

 そんなに更新する愚痴が有ったら、私の身体も心ももたない。


 そんなこんなで、お隣は大事な情報源だ。


 そこに書かれていたラップ式ポータブルトイレの事を福祉用具の業者に伝えた。

 業者はすぐに総合カタログをもってきた。


 お隣が購入したというポータブルトイレはおそらく、

「安寿 家具調トイレ セレクトR 自動ラップタイプ」

その、ノーマルタイプだと思われる。

 カタログ価格、140,800円。(税抜128,000)

 手が出ない。

 家の福祉用具業者は、お隣の福祉用具業者のように四万円を超えるような値引きはしてくれない。

 有っても0.1%引き程度だ。

 

 福祉用具を購入する場合、介護保険による購入補助がある。

 ウチは一割負担なので、一万四千八十円で購入できる様に思えるが、一年間合計の限度額が十万円までなのだ。

 十四万は限度額オーバーなのだ。

 ギリギリ十万に納まるラップ式もあるが、暖房便座が付いていない。

 母の寝室はエアコンかけっぱなしで室温を一定に保つという事はできない。

 そこで冬は暖房が欲しいのだ。

 あと、ひじ掛けは跳ね上げ式でないといけない。


 幸い母は、移乗が出来る。

 歩けるようにまでは回復しなかったが、介護ベットから車椅子、介護ベットからポータブルトイレへの移動は、自分でできる。

 もちろん、介護ベッドには身体を支える手すりが付いているし、車椅子もポータブルトイレも、介護ベットの横にピタリと横づけする。

 そして、移乗の時に邪魔になるひじ掛けの跳ね上げは、必須なのだ。


 ラップ式で暖房便座、ひじ掛け跳ね上げ式になると二十万円ほどする。

 ラップ式はあきらめるしかない。

 ちなみにラップ式と言うのは、便、トイレットペーパー、尿を吸収したポリマーが、スイッチを押すだけでラップにくるまれて出てくると言う優れ物だ。

 後はそのまま捨てればいい。

 ついでに四十万、五十万出せば、ベッドの横に置く水洗トイレもカタログには載っている。

 工事費は別だそうだ。


 結局、予算の都合上、従来型のバケツに貯めるタイプにするしかない。

 うちヱ さわやかCH ホット便座ひじ掛け跳ね上げタイプ。

 税込73,700円

 

 前後の価格のモノもあるが、二万円ほど安いものは一割負担で二千円の差なので、無理にチープにする必要はない。

 だったらもっと高いモノを、と思うかもしれないが、そうなると本体が重いのだ。

 現在お試し品として借りているポータブルトイレは22㎏ある。

 夜にベット脇にセッティングするのに、結構重い。

 キャスターが付いているが、使うと畳を削ってしまうのだ。

 注文の品は16㎏。

 腰の負担は軽減されるはず。


 ラップ式はあきらめたので、これはバケツタイプ。

 バケツタイプとは椅子の中に専用バケツが有って、その中に排せつ物やトイレットペーパーを溜めて置くもの。

 夜にバケツに少し水を入れて置き、朝にはトイレへ持って行き流す。

 その時問題になるのが、中身を流した後の、バケツの洗浄だ。

 お風呂、洗面台、どこで洗うか。

 洗った後は、今度は使った場所を掃除しなくてはいけない。

 結構介護をしている家族の負担になる。


 そのはずだったのだが、家のトイレには、忘れ去られた洗浄ノズルが有る。

 父が人工肛門になった時、役立つのではないかと思い、ホームセンターで買ってきて、取り付けたものだ。

 結局、ストマーには使わず、忘れられた存在になっていた。

 六千円ほどした「カクダイ 7992 分水洗浄セット」

 人には、コンビニのトイレにあるやつと言われるが、私はコンビニのトイレに入ったことがないので、判らない。


 簡単に言うと、庭とかで使う散水ホースがトイレにあるようなもの。

 シャワーとかは出ず、ストレートだけで、勢いが強すぎるので、ノズルの先端の穴をドリルで広げてある。


 これがポータブルトイレのバケツの洗浄に活躍しだした。

 穴の拡大で、水量を増やして勢いを弱めてあるので、飛び散らない。

 バケツの中を洗い流すだけの勢いはある。

 トイレの便器の上で、バケツを斜め下に向けて、水が便器の中へと流れ落ちるようにして、ノズルのレバーを握って水でバケツの内側を流すだけで、きれいに洗える。

 あとはさっとトイレットペーパーで拭けばいいのだ。

 いちいちトイレ掃除をする必要もない。


 ポータブルトイレのバケツの洗浄で、お悩みの方が居たら、ぜひおすすめしたいアイテムだ。


 こうして、バケツ洗浄の問題は、ウチではあっさりと解決した。


 後は、注文の、新品のポータブルトイレが納入されるのを待つばかりだ。


 母は、ポータブルトイレを使って、夜は自分でトイレが出来るので、介護は楽になった。

 父は、前立腺肥大のせいか、尿意がない。

 オムツを替えている最中でも、おしっこを漏らして、替えたばかりのケアシーツを、びちゃびちゃにする事が有る。

 尿意がないので、トイレの介助はない。

 ただただおむつを取り替えるだけだ。

 また便も、人工肛門なので、ストマーのチェックをして、袋の中に便が溜まっていたら、絞り出す。

 袋の中が、便やガスでいっぱいになると、内圧でストマーが?がれてしまうので、そうなると大惨事だ。

 また、ストマーの接着部分をかいていると、剥がれる。

 

 今では、オムツごみからの臭さか、ストマーの中がいっぱいになっている臭いか、ストマーが剥がれかけている臭いか、だいたいわかる。

 それで何とか乗り切っている。


 そんな、糞尿まみれの介護離職者たちに、ベーシックインカムを。

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