Hello inner world

 退院してから分かった事が有る。

 退院後、あの、娘地獄病院へ外来で診察に行った時の事だった。

 母は手術前、入院していた病院から、外来で通院していた事を、全く覚えていなかったのだ。

 通院は一度や二度ではない。

 

 朝、病院へ迎えに行き、外出許可など手続きをする。

 リクライニング車椅子に乗せられた母と書類などを引きうけ、介護タクシーに乗せて、別病院の脊椎の専門医の所へ診察に行く。

 行った先の病院でも、血液検査、尿検査、レントゲン、MRIなど、いくつもの検査を受けている。

 朝から行って、昼を超えるので、病院で昼食もとっていた。

 脊椎の圧迫骨折で痛がってはいたが、会話も成立していて、特に変わった様子はなかった。


 せん妄の症状が出ていると聞いてはいたが、私の前では変わった様子はなかった。

 だから重くは受け止めていなかった。


 ちなみにせん妄とは、意識障害の一種。

 強くはない意識障害に、幻覚や妄想や運動不安が加わった精神状態。

 原因はいろいろあるのだが、高齢者が入院や手術を受けたりする事でも起こる。

 なので病院は神経をとがらせる。

 

「せん妄」の予防と対策について

と言う、プリントを渡されたので、紹介しておこう。

 高齢者が入院すると、家族に配られる物だ。


せん妄とは

 体調が悪いときや手術の後、新しい薬の影響に加えて、入院による環境の変化が加わることで、一時的に意識が混乱、寝ぼけたような状態になることです。多くの方は、身体の回復や環境への慣れで改善していきます。


せん妄を起こしやすいのはどんな方でしょう

 高齢の方

 物忘れが目立ってきた方

 脳卒中になったことがある方

 「せん妄」になったことがある方

 アルコールをたくさん飲む習慣がある方

 睡眠薬などを飲んでいる方


せん妄の症状とは

 (すべての方にみられるわけではありません)

 時間や場所が分かりにくくなる

 いないはずの人が居るような気になる

 入眠しにくくなり日中うとうとしてしまう

 落ち着かずソワソワしてしまう

 怒りっぽくなる

 話のつじつまが合いにくくなる

 これらの状況が、ご病気や入院の後に急に起こり、周囲の方に「今までとなんだか違うな」という印象を与えます


「せん妄」が起こらないためには以下のようなことを心掛けましょう

 朝や日中はカーテンを開け部屋を明るくしましょう

 普段使用されているメガネや補聴器は使用しましょう

 時計やカレンダーを近くにおいて日時の確認をしましょう

 睡眠リズムを整えるために、日中は可能であれば新聞や本を読んだり、テレビを見たりしましょう

 痛みや便秘などご本人が気になる事や心配事は早めに医療者に相談をしましょう


ご家族からよくある質問

Q1.つじつまがあわないことを言うので、間違いを訂正して、逆に怒らせてしまったのですが…

A.つじつまが合わない内容であってもご本人の言うことを否定せず最後まで聞いて、そのあとに刺激しない安心できる言葉を伝えましょう

例)患者さん:「天井から人がのぞいていた」

  周囲の方:「夜中にそんなことがあったの?それは気持ち悪いね」

Q2.これは認知症でしょうか?どんどん悪くなっていくのでしょうか?

A.認知症とせん妄は全く異なる症状です。せん妄は原因が取り除かれれば、良くなる可能性が十分にあります

 済生会〇〇〇病院 3Dサポートチーム作成


 以上、病院から渡された資料に目を通したが、コロナ禍で接触が少ないせいか、該当するような事は無かった。

 私と居る時は、母は極めて普通である。

 それでも医師、看護師からはせん妄が出ていたと、カンファレンスなどで告げられる。

 私は実際に見てはいないので、実感がない。

 せん妄の症状が出ていたと言われる期間にも、母と会話しているが、おかしな事は言っていない。


 一つ思い当たる事と言えば、洗濯物を取りに行ったときに居合わせれば、コロナ禍で面会禁止にもかかわらず、スケジュールを遅らせてでも、会話の時間を作ってくれたことだ。

 それどころか、引き伸ばされている感すらあった。

 今にして思えば、あれが病院のせん妄対策だったのかもしれない。


 ちなみに、肝臓がんで右葉のすべてを摘出した時も、黄疸が出て緊急入院してから長期入院になったが、毎日顔を出していたので、せん妄にはなっていない。


 今回のせん妄も、コロナ禍の影響だろうか。


 話しは戻って、退院後の診察待ちで話していると、病院からせん妄が出ていたと言われていた期間の記憶がほとんどなかったのだ。

 手術後は敗血症で40度の熱を出し、救急救命室に入っていたので、仕方がない。

 それまでの一か月の入院の間の記憶も、ほとんど無かった。

 入院中通院のお昼も、

「何食べたい」

「おかかのおにぎり」

具が鰹節のおにぎりは、母の好物だ。

 コンビニで買ってきたおかかのおにぎりとかを、母は会話に矛盾が生じることなく、機嫌よく食べていた。

 が、その辺の記憶は今、全くない。

 病院では圧迫骨折を痛がって、騒いだりもしていたらしい。

 それも記憶にはない。

 それもせん妄と言う物なのだろう。


 それでも、私と居た時の母は、いたって普通だった。


 いま、覚えていないことを除けば。



 そんな介護離職者達に、ベーシックインカムを。

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