元祖厳七郎江戸日記No.5

「右京さん、引退してください!」




もうすぐ毎年の風物詩というべきテレビドラマが蘇る。そう、テレビ朝日系列の「相棒」シリーズである。


水谷豊演じる変わり者の杉下右京警部の名推理が冴える本シリーズも、今回で十九作目になるとのこと。


初期の単発物も含めると、既に二十年という歳月がかけられておりさすがにマンネリというかやり尽くした感は否めない。


何よりも昔から観ていたファンとしてつらいのは、マンネリ感を打破するためか相棒以下長年ドラマを支えてきた役者さんが登場しなくなることだ。


鑑識官米沢守を演じた六角精児が、警察学校の教官になることで退場したことは歴代相棒の引退よりもつらく寂しかった。


週刊誌が伝えるところによると、水谷豊はこのドラマで天皇と呼ばれるほど絶対不可侵な存在になっているという。


脚本や演出にも口出しし、彼の意を受けない者は出演者であろうとスタッフであろうと首を切られるとか。


ドラマ内で警視庁の厄介者扱いをされ、いつ首を切られてもおかしくない杉下右京の役所(やくどころ)とはまったく正反対である。


厄介者扱いされているという点では、フィクションといささか重なる点もあろう。


さすがに本人も巷の評判を気にしていたのだろう。脱杉下右京を狙って、何回も映画で主演を果たしたが同じ映画でも「相棒」ほどの評判を取らなかった。


これはかつて必殺シリーズで中村主水を演じた故藤田まことや、「裸の大将放浪記」シリーズで山下清を演じ続けた故芦屋雁之助の苦しみとどこか似通っている。


水谷自身、本当は辞めたくて仕方がなかろう「相棒」シリーズも制作サイドの思惑も重なって進退窮まっているのだろう。


兄貴分だった故松田優作が、


「自分も短気だが、豊は役者に向かないと思うほど短気だ」


と述懐したほど、本来の水谷は気が短い。


出演者やスタッフに八つ当たりして敵を作るより、も〜う辞〜めたと制作サイドに丸投げしたほうが精神衛生上スッキリすると思うがいかがだろう?


※「相棒」の準レギュラーだった芦名星さんが36歳の若さで急死した。慎んでご冥福をお祈りします。


※このエッセイは不定期配信です。


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