元祖厳七郎江戸日記No.4
江戸嚴求(ごんぐ)
「それ言うたらあかん!」
残念ながら、最初の面接は落ちてしまった。道に迷って遅刻したのがウイークポイントとなったらしい。
斡旋会社から、面接先の詳細をLINEで送られた際事前に下調べをしなかった自分が悪かった。
敗因ははっきりしているので、次回は同じ過ちは繰り返すまい。次行こ、次。
ただ家内には、遅刻が原因で落ちたと言えなかったので散々な言われようだった。
やれ、就労継続支援A型事業所なんかに就職したのがいけなかったのだ。なによりその前に、就労移行支援施設に通ったのが間違いの元。
とにかく私のこれまでの決断を全否定するような発言をしてきたのである。いくら夫婦とはいえ、言っていいことと悪いことがある。
思えば十七年前、結婚する直前にうつ病発症が発覚した。以来、家内には苦労のかけ通しだ。
定職にも就けず、さまざまな仕事に就いては辞めての繰り返しをしてきた私に苛立ちを覚えても仕方がない。
だが、夫婦になった以上それを言ったら離婚だよという言論には気をつけてもらいたい。そりゃあ、私だって言ってはいけないこと言ってきちゃっているが。
素直に謝らない私も悪いと思う。でも、私の良い面も悪い面も承知の上で一緒になったんだから、最低限これは言っちゃいけないというのは弁えてほしい。
ましてや一回りも年上なんだから、大人の対応をしてくれよと愚痴りたくなる。
結婚は人生の墓場と、先人は宣った。半分はうなずけるが、半分はいや、そうじゃないと反論したい。
人生を灰色にするのも、薔薇色に染め上げるのも結局は自分次第だ。だから初めから無理と決めつけず、改善するよう試みなければいけない。
私が定職に就いて家事を手伝えば、きっと家内だって変わってくれるはずだ。新婚時代の初々しさを思い出そう。
きっと変われる。希望こそが人間に与えられた光なのだから。
※このエッセイは、不定期配信です。
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