死人
命削症罹患者を「死人《しひと》」と呼ぶ。
_所変わって特殊部隊第一訓練場。
王都にいる特殊部隊の隊員19名は隊長に呼び出されこの場に集まった。
ここは訓練場。互いを磨き合い、生存率と効率を上げるための場所である。しかし、集会で使われることは滅多にない。隊員たちは皆首をひねって考えていた。
「全員集合なんて去年以来じゃねぇか?」
「…そうだな。お前が公共の建物に被害を出した時以来だ」
赤髪の男が隣の黒髪の男にニヤニヤ話しかけたが、冷たく耳が痛い言葉を返され冷や汗を流す。
いや、あれ、ちょっとな、と吃るが黒髪の男の目は揺るがない。
「…悪かったって」
「はぁ。今回はお前じゃないんだろ?」
「俺だって馬鹿じゃない。二度もやんねぇよ」
どうだか。
黒髪の男は聞こえるようにため息をつく。
戦闘力は申し分ない同僚は職務態度に問題が多い。所謂戦闘狂じみた行動もする上に雑把な性格がそれに拍車をかけていた。
注意だけで済めばいいものを規則破り常習犯のため厳重注意+ペナルティという具合だ。よくセットで扱われる自分もその例外ではなく。
「なぁホントに悪かったって」
「…分かっている」
見限るのはいつだって出来る。
だからそれまでは付き合ってやるのだ。
そう何度も口の中で反芻して飲み込む。
………もっとも、簡単に見限ってやれるほど浅い付き合いでもないのだが。
しばらく会話らしきものを交わしていると隊長が姿を現した。
「……ん?何だあのちっこいの」
隊長の後ろをついて歩く小さな人。黒いフード付きマントを着てフードを深く被っているため顔は見えない。
「緊急集合をかけて悪かったな。
今回、上の判断によってうちに新隊員を入れることになった。そのことについて諸注意がある。よく聞け」
新隊員、というのは隊長の斜め後ろに控えている小さな人だろう。
しかしあれは小柄というより子供のような_
「最近、死人が急激に増加したことはお前らがよくわかっていると思う。それの解決策としてコイツを戦力とすることになった」
「たいちょー!そんなちっこいのが戦力になるんすか?見るからに弱っちそうじゃないっすか」
「そうですね。解決策、と言うからには僕達よりも強い、ということですよね?外見で判断するのはよくありませんが僕は彼と同意見です」
「いやいやいやこれはアレだろ?暗殺者みたいな感じのやつ」
「それにしたって小さすぎでしょ。これじゃ子供と何ら変わりないじゃない」
隊員たちが好き勝手に言い合う。
黒髪と赤髪は何も言わなかったが、概ね彼らに同意だった。
「言いたいことはよくわかる」
深く威厳のある声がその場を静めた。
「その上でよく聞け………コイツは死人だ」
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