第12話 第一回戦結果報告①
「はぁ……。ただいまぁ……」
その日、結局学校では由愛とは一言も会話をすることなくいつも通りの学校生活を送った俺。いまだに朝の挨拶の後悔が抜けきらない。
「Yさんは上手くやったんだろうなぁ……。それに引き換え俺は……」
自室に戻ってトボトボとパソコンを開く。Yさんからのメッセージはまだ来ていなかった。どうやらまだ帰宅していないようだ。ひとまず俺の方からメッセージを送っておく。
『挨拶、頑張ろうとはしたんだけど、上手くできなかった……。Yさんはどうだった?』
しばらく待ってみてもYさんからの返事は返ってこない。
どっか行ってるのかもな。YさんにだってYさんの予定がありそうだもんな。……よし!それなら俺は俺にできる努力をしよう!
鞄から今日学校に持っていった数学の問題集を取り出して、それを解き始めた。せめて勉強くらいはできるようにしたい!……他がダメダメだから。
「はぁ……。考えれば考えるほど、俺って情けないな……。しかもこの問題分かんないし」
その後、夕飯に呼ばれるまで2時間ほどずっと、俺は数学の問題と向き合っていた。
夕飯を終え自室に戻ると、Yさんからの返信が届いていた。急いで駆け寄って、チャットアプリを開く。
『私は自分から挨拶できたよ!それに相手も挨拶返してくれたんだ!』
Yさんはすごいなぁ~。自分から挨拶なんて、俺はできなかったよ。
心の中に、多大な尊敬の念と、少しの嫉妬が浮かぶのが分かった。自分が出来なかったことを相手はいとも簡単に乗り越えてしまうことへの嫉妬。俺はどこまで落ちぶれる気なのだろう?
『Yさんはすごいね!俺は相手に挨拶してもらって、それにかろうじて返事しただけのダメダメな奴だったよ……』
『スグはダメダメじゃないよ!誰だって久しぶりに話す人には緊張しちゃうって。まずは返事できただけでも大きな進歩だったんじゃない?』
懸命な彼女なりの励ましだったのだろう。でも、今の俺には彼女からの慰めほど、自分をみじめに感じるものはなかった……。
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