第11話 俺の……挨拶……
やって……しまった……。
由愛が行ってしまった後の玄関先で、一人うなだれてしまう。自分でもうんざりしてしまうほどのヘタレっぷり。思い出すだけでイライラしてくる。
それに……、なんで俺から挨拶できなかったんだよ⁉
百歩譲って、由愛が可愛すぎるから緊張してしまうのは良いとしよう。でも、流石に本人の前で思い切り目をそらしてしまうのは良くないと思う。まるで彼女を拒絶しているようではないか。
幸い、由愛の方から俺に挨拶してくれたから何とか気まずい空気になることはなかったけれど、あそこは俺の方から挨拶すべきだったんじゃないか?
しかも彼女から挨拶してもらって驚きのあまりすぐに挨拶が返せなかったのもどうなんだろう?いくら俺がコミュ障だからって、流石に相手が後ろを向いた時に挨拶を返すって、失礼なんじゃないか?由愛だって、そのまま走ってっちゃったし。
はぁ……。俺って本当にダメな奴なんだなぁ……。これじゃ、由愛に振り向いてもらうどころかまともに話せるようになることすら望めないな……。
そのままトボトボ学校へ向かった。結局、登校したのはいつもの時間だ。教室では由愛は複数のクラスメイトに囲まれて楽しそうに話していた。
こんな時、ラノベの主人公ならチラッと二人だけで目を合わせてニコッと微笑みあうなんてことをするんだろうけど、俺たちの間には当然そんなものは存在しない。
そもそも教室では他人のふりをしているのだから、そんなことをしてばれたらどうなるかなんて一目瞭然だ。
それに、そのような行為は想いあっている二人だからこそ成しえることであって、ただ俺が片思いをしているだけの状態で、そんなことが出来るはずがなのだ。
本当に、つくづく自分が嫌になる。小学生の頃、もっと彼女に似合う人間になれるように努力していたら変わっていたんじゃないか?中学生の頃、ラノベに走らずに勉強していたら、変わっていたんじゃないか?
そもそも今の自分を変えないと意味がないのに、変えることなどできない過去を嘆いている俺にチャンスなんてあるわけがないんだろう。
自分が情けない……。あの頃、まだ由愛と一緒にいたころ、このままずっと由愛と一緒にいられるんだと馬鹿みたいに思い込んでいた自分が……情けない……。
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