第3話 めざめ
一ヶ月間ずっと酒を飲み、泥酔し、寝て……また、酒とつまみを買いに、歩いて五分もかからないコンビニに行くのを繰り返してきた僕。
ろくに飯も食べていない。
風呂にも入っていない。
髭も髪も整っていない。
そして足の踏み場もない部屋にいる僕
そんな悲惨な姿を見て、友人は少し引き気味だった。それでもなんとかして部屋に入ってきて、
「まずはどこから手をつけようか……。まずお前は水を飲んで、酔いを醒まし、風呂に入れ。それからじゃなきゃ何も始まらん。」
と言い、僕を風呂場に押し入れた。
僕は風呂の中で今までのことをぼけっとしながら考えた。
僕が風呂から上がった頃にはゴミはまとめられ、掃除機をかけ、換気を行い、ご飯が用意されていた。久しぶりの外の綺麗な空気と自分の体から香るシャンプーや石鹸の匂い、その爽快感と目の前にあるできたての飯。白飯と味噌汁と焼き鮭という簡素でも美味く、人間にもある温かい、手作りの飯にいたく感動してしまった。
友人の「食えよ。」と言う声で、やっと人間に戻れたような、そんな感覚があった。一ヶ月ぶりの飯はとてもしょっぱかった。美味くて、感動して、顔がくしゃくしゃになるほど涙を流しながら、むちゃくちゃに口に投げ込んだ。
そのしょっぱさは男料理だからなのか涙の味なのかも分からないほどだ。いつの間にか完食。友人は、それまで険しい表情で見ていたが、僕が食べ終わった食器をじっと見つめていると、くすっと笑い、すっとおかわりを差し出してくれた。そしてそのおかわりもみるみるうちに平らげて極度の満足感を胸に……。
「ごちそう様でした。」と心から声に出した。
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