第10話 手配書は綺羅星の如く
「
「当たらずとも遠からずってやつね。少なくとも、仲良くはしていないかな」
会長は
思い返せば、昼休みに春山もそんなことを言っていた。確か宇宙人の
もしも今までの話が本当だったら目も当てられないからな。
「……俺が命を狙われるってのはもう確定なのか?」
「残念だけどね」
「そうか……」
絶望的な状況である。一体いつから俺の住む世界はこんなにもハードになってしまったのだろうか。ま、
「その
「可能ではあるよ。でも、それも難しいかなァ」
俺の意見に、しかし会長は
「ほら、見て」
「なんだよ、コレ」
「いいから見てみなさい。それでわかるから」
見ると、どうやら写真のようで、
「えっ……」
写真の下には
「な、なな――」
「おめでとう。ついさっき太陽系中に出回っていることが確認されたんだ。くふふ、浅嶺くん、キミなかなかいい顔をしてるよ。
あんぐりと
「いやァ、それにしても紅葉も
「……うぅ、やめて真昼。恥ずかしい」
俺の日常の
……はぁ、何もかもがおかしい。なぜ宇宙人がそんなアメリカ
怒りと混乱に
「なぜだか知らないけど、西部劇が彼らの最近のブームみたいなのよねー。腰に拳銃を
「……被ったりして、ます」
ダメだ。もうツッコミきれねえ……なんで今から侵略しようとする惑星の文化――しかも過去の!――に影響されるだよ。なんて宇宙人だ。なあ、ほんとに俺、そいつらに命狙われているのか? 遊んでるようにしか思えねえんだけど。
「ま、それがホントに太陽系中に発行されているって証明する手立てはないし、結局信じるか信じないかは浅嶺くん次第、なんだけどね……♪」
「……先輩しだい、です」
会長は白衣に手を突っ込みニヒルを気取る。場所が場所だけに
「ん、とまあ冗談はさておき――」
「……さておき」
さすがに事態の重さを考え直してくれたのか、会長は
真面目な会長はどこか
自然と俺は口を
俺がそんな親に
「――ごめんなさい浅嶺くん」と本当に申し訳なさそうな声で言った。「一度情報が流れてしまった以上、キミがアタシたちと無関係だって主張するのは本当に難しいの。だからごめん」
「ちょ、ちょっと……!」
意外な展開に俺は慌てる。
「や、やめてくれよ。手配書のことなら俺はべつに気にしてないって。そもそもそれは宇宙人の仕業なんだろ? どうして会長が謝るんだよ」
「手配書のことだけじゃない。アタシたちの不注意でキミを危険に巻き込んでしまった。本当にごめん」
頭を下げ続ける会長。隣でおなじように春山も頭を下げていた。
「……ごめんなさい」
「春山まで……」
そんなふたりの姿を見て俺はため息を吐く。ああ、どうやら俺はお
いや、そもそもまだ実感が
だからもしかするとそれは、このあと家に帰ってご飯を食べ、風呂に入り布団に寝転んで、ようやく実感するモノなのかもしれなくて。その時になって初めて恐怖に震えたり、理不尽な事態に対する怒りが芽生えたりするのかもしれない。
でも、だとしても俺はたぶん、会長たちを責めることはないと思うんだ。
だって、そもそも俺だって望んでいたんじゃないか。めくるめく非日常ってやつを。退屈だと思っていた日常に刺激が欲しくて、だからこそ俺は春山に声を掛けたんだし、今だって、こうして会長との掛け合いを心の底じゃあ楽しんでいる気がするんだ。
だからこうなったのも会長たちのせいじゃなくて。
ただ俺が望んだから。俺が望んだ結果に過ぎなくて、俺が責任を持つべきモノなんだ。
だから俺は言った。いまだ頭を下げ続けている少女たちに向かって。
「……頭を上げてくれ、ふたりとも。俺はべつに気にしちゃいない。それよりも、女の子ふたりに頭を下げられるなんて状況の方がよっぽど落ち着かねえよ」
俺の言葉に、ふたりは恐る恐るといった様子で顔を上げて、
「許してくれるの?」
「……の?」
「許すもなにも、起きてしまったことは仕方ない。大切なのはこれから気をつけること、だろ?」
あ……、と会長は
「そ、それに会長は言ったじゃないか。俺をここに連れてきたのは守るためだって。だから、なんていうかその……たとえこれから先、俺が危険に晒されるんだとしても、守って、くれるんだろ?」
たどたどしく
でもいいだろ、べつにさ。それで彼女たちが笑顔になれるんなら、それはきっと必要なセリフで、ほら、だから彼女たちもあんなふうにまた笑っているんだ。
「くっくっくっ、キミ最高だよ♪ 本当に気に入ったかも♪」
「……先輩はわたしが守り、ます」
会長は不敵に笑って、春山は両手を
「——よし、じゃあこの話はもう終わり。
そんな少女たちの姿を見ながら、やっぱり非日常ってやつもそんなに悪くないのかもなと俺は思っていた。
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