第13話 【秘密結社】プロスペロー
「――さて、
会長はラボ内を見渡して、それから俺に目を向けて言った。
「くふふ、浅嶺くん。秘密を知ったからには、キミにはアタシたちの仲間になってもらうよ♪」
「……やっぱそれ本気なのかよ」
「もちろん♪ 秘密を言いふらされでもしたら
「……まあ、アンタらが勝手に
にやける会長に俺は疑問をぶつけることにした。
「なぁ会長。ひとつ
「いいよ、言ってごらん。なにが
本当はひとつどころではないが、一番気になっていたことを俺は会長に
「結局のところ、——アンタたちはいったい
「それはもう言ったでしょ? アタシたちは
あくまでも自分たちが超能力者であると言い張るつもりらしい。むろんそれも議論の
「すまん、言い方が悪かったな。つまり、俺が言いたいのは、アンタらは何が目的でこんなことをしているのかってことだ」
俺はラボ内にいるメンツを見る。
天才生徒会長。
そして、謎に
彼女たちがこの地下空間に
俺はそれを
「……ま、確かにそれはまだ説明していなかったわね」
手で
しかし会長が口を
「待てよォ真昼。オレはまだコイツが仲間になンのに納得してねェぞ」
「にゃはは、
「……わたしも、
「——悪いけど、今はアンタたちは黙ってなさい。ややこしくなるから」
やはり会長がこの場におけるボスなのだろう。
そして再度俺にむかって
「さて浅嶺くん。さっきも言った通り、アタシたちはとある
「……アンタらは四人だろ。自然に俺を
「
会長は
「でも実際のところ、アタシたちの目的について、キミにもある程度の予想はついているんじゃない?」
「それは……」
確かにこれまでの
昼休みに起きた春山による宇宙人との
それら全てを繋ぎ合わせて考え、俺はひとつの結論を
「なるほどな——世界を守る
「いいえ、違うわ。——その逆よ」
「え、逆って……」
俺の
「そう——
「……世界征服って……おい」
俺は
しかしそんな俺の動揺を予想していたのか、会長は
「くふふ、どうしたの? そんな
「……
「くふふ、むろん正気さ。アタシたちの結社の目的は世界を征服し、アタシたちの存在を世界に知らしめること。それ以上でもそれ以下でもないわ」
高らかに宣言する会長に、俺は眉を
「……まあ、仮にだ。仮にアンタの言っていることが本気なんだとして、実際問題、アンタら四人だけでいったい何ができるっていうんだよ」
たった四人だけで世界を落とせるのだとしたら、この世界に戦争なんてとっくの昔になくなっている。
しかし会長は肩をすくめて言葉を続けた。
「もちろん難しいことはわかっているよ。だからこそ今はまだ地下に隠れてるし、敵の攻撃から気まぐれに人類を守ったりもしている。——でも、そう遠くない未来にアタシたちはこの世界に
「……無理だ、出来るわけがない。アンタの主張には
「くっくっく、やっぱりキミ全然危機感がないね」
会長は高らかに
「——何度も言ったよね? アタシたちは超能力者なの。いわば
「……それこそ
「驚いた。まだそんなこと言ってるんだ?
「ああ、
そしてそんな会長たちに、いい加減イラついていた俺は
「――いいか? 超能力者なんて、創作物のなかにしか存在しないんだ。もし現実にいたとしたら、そいつは魔女か、悪魔だ」
「……」
空気が冷たく感じる。誰も言葉を発しない。会長も、春山も木下も、もちろんヨシツネ先輩も。誰もが
「……いいわ」と、そんな空気のなかで会長は
「あ、ああ……」
やけにあっさりと引き下がる会長に、少し
「——けれど、アンタはきょう空を飛んだでしょ?」
「……」
俺は口を
会長のは手品。
木下のはただ力が強いだけ。
ヨシツネは誰かがアフレコしてる。
それで説明できる。
……だけど、あれは、あの出来事だけはどうやっても説明がつかない。
無理やり説明しようとすれば、会長が天才的な技術を持って空飛ぶマシンを発明した。それもちょっとやそっと見たくらいじゃ気づかないくらい小さくて、人間をふたりも持ち上げられる力を持つようなモノを。
しかしいくら会長が天才だと言っても、これは現実的じゃない。
「どうしたのよ? アンタの言う通りなら紅葉にもタネがあるはずよね? 早く説明しなさいよ」
会長の
間違いない。会長は
でもなぜだ? なんで会長はいきなり怒りだした?
「ねえ、早く言いなさいよ」
「……わからない。少なくとも、俺には説明できない」
「ふーん、あっそ。じゃあ認めるんだ。あの子が超能力者だってこと」
「……認めるってわけじゃない……ただ、人間には
「まぁいいわ。それで、なに? 人間にはできないってことは、アンタは、あの子が悪魔に見えるっていうの?」
「……」
ああ、そうか……やっと理由がわかった。俺はなんて
会長が怒るのも当然だ。
もちろん俺は超能力者なんていないって信じてる。
だけどもし、もしも会長たちの言うことが全て真実だったとしたら、俺は春山や会長たちを悪魔と宣言したわけだ。それはあだ名とか可愛いモンじゃない。理解できないものを否定するために、理解できる言葉で
あるいは会長たちが地下に潜むのも、それが理由なのかもしれなかった。
何も言えず
「……真昼。いいよ、言い過ぎだよ」
春山の声は優しく、けれど少しの
「いや、俺が悪かった。……すまん春山、無神経だった」
「……大丈夫。気にしてない、です」
気にしていないはずがない。その証拠に、春山は俺と目を合わせようとしなかった。
本当に馬鹿だ、俺は。彼女を傷つける可能性を考えもしないなんて、俺はどうかしていた。
暗く沈みゆく俺の耳に、しかし場違いな明るい笑い声が響いた。
「にゃはは、それぐらいで許してやるにゃマヒルー。ケンジだって
ヨシツネ先輩のなだめる言葉に、会長はそっぽを向いて、
「ふんッ。ま、そうね。アタシも言い過ぎたわ。……悪かったわね」
「いえ……俺こそすみませんでした……」
「にゃにゃにゃ、ケンジもそう落ち込むにゃにゃー。まったくマヒルもひどいのにゃー、いたいけにゃ少年をここまで追い込むにゃんて。マヒルは本物の悪魔に違いにゃいのにゃー」
「ちょ、な、なによー! アタシはアンタたちのために心を鬼にして言ったんじゃない!」
「にゃはは、絶対ウソにゃ。マヒルはド
「こ、このクソ猫ッ! アンタ、覚悟はできてんでしょうね!」
「にゃー、マヒルがまた怒ったのにゃ。逃げるのにゃー」
「このッ、待ちなさい!!」
ラボを
「――おい真昼ッ! 師匠!」
しばらく追いかけっこに
「いいのかよ、まだ説明の途中だぜ? 見ろよ、アイツどうしていいかわからず困ってんじゃねェか」
「にゃはは、忘れてたにゃ。ひとまず休戦にゃマヒル。先にケンジに説明を続けてあげるのにゃ」
「……いいわ。けどそれが終わったら再戦だからね。……逃げるんじゃないわよ」
ヨシツネ先輩に
「ごほんッ。ま、まぁとりあえず名乗っておくわ。アンタが
これから俺が所属することになる結社の名を告げた。
「——アタシたちは〝プロスペロー〟。アンタの言うように、夢を
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