涼宮ハルヒ的学習

 今日は、土曜日。ジョン・スミスである俺にとって、受験勉強同様、テスト勉強も重要である。なのに、ハルヒのやつは、


「古泉君、教科書があるのに、ノート見ながら勉強してたの?」

「されるように、学べというのが、我が家の掟でして。スミマセン。」

「有希、あなたは、まともなようね。でも、ただ腕を組んでるだけじゃないようね。」

「想像した。」

「ああ、傾向と対策というやつね。」

「そう。……あの先生のしゃべり方から、いつテストを作り出すか……」


「待ってました、長門さん!」

 俺は、何度もこの予知能力に助けられてきた。まあ、全部覚えきれないから、100点取ったことはないし、平均点前後しかとったことはないのだが。

 そこは、もう察したらしい長門。頭で難しそうに言葉を選んでいる。

「あの先生は、今日の夜7時には、現代文の128ページを開くわ。そして、なんかアルミ缶……ビールは口にしてもいいのかしら、未成年だけど。」

「ああ、かまわんかまわん、とにかく先を。」

「キョン! あなたは教えてもらってる側なのに、面倒かけさせてその態度? そんなことより、ビールとか言葉でいうことは問題ないから、それでそのあと何をしたの?」

「え?」

 長門が、キョンのために言葉を選んでいたが、ハルヒの興味の質問に吸い寄せられる。

「なんか空の冷蔵庫を見て、入れ忘れたのを思い出したって感じで、肩を下げて

しょんぼりしていたわ。たぶん、トイレの前。」

「それで、それで。」

「なんか、もとの部屋に戻ってきて、隅にあった生暖かいビールをもって、カチッカチッって、ふたを開けるのにてこずっているようね。昨日深爪していたせいかしら? なんか痛そうだったわ。」

「有希、あなた最高じゃない! 目の付け所がいい!」

「……落ちをつけたわけじゃない。……事実。……だと、思うんだけど。」

「その推理力、探偵もいいかもね!」

「ね、じゃねえよ!」

「キョン、だから失礼だって言ってるでしょ! それで、続きは?」

「……テストの製作まで、あと25分くらいかかるから。」

「そうこなくっちゃ、おもしろくないわよね~」

 脳天気なハルヒに長門を奪われた俺は、とりあえず、25分、古泉のノートを当てにしに行った。


「古泉さま、お隣空いてますか?」

「どうぞ。」

「きれいな字ですね。」

 ふと、古泉の顔色が変わる。

「どうして、あの人の言葉以上の言葉を想像してしまうのだ~!」

 小泉が暴走した。

「家に来た家庭教師の方々も、あんなに色々な想像、いや、妄想といってもいい、そんな余分な空白がなかったというのに~」

「まあ、落ち着け、古泉。」

「私がいけないんだ! もっと諂いを覚えねば。」

「古泉、無理に合わせる必要はないぞ~。落ち着け、お前は古泉。なんでも、完璧にこなせる……。」

「そうだ、そうなんだ。僕は完璧を、……ハッ、いや、取り乱して済まない。」

 なんか、今ほおに手を当てていたがあれは何かのスイッチか?

「キョン君、数学やろっか」

「そうだな、古泉。!」

 きれいに黒板丸写しだなぁ、おい。

「ここは、どういう意味なんでしょうか?」

「え? 板書にミスでもありました? 失礼。」

 ノートを以って立ち上がり、ノートをいろいろな角度から読んでいる。

「ミスはないようでしたが。」

「いや、俺みたいなやつには、わからないんだよ。」

「『わからない?』?、こ、これが。」

 小泉は膝を落とした。

「瞑想して、今思い出します。正確な板書だと思っていたなんて、僕は何てやつなんだ!」

 まずい、古泉が、いつもの古泉が返ってこない!

「ぼく、どうしたらいいですかね。チョークと黒板があれば、再現しますが。」

 と、スマホを取り出した。

「いや、俺のノートに存分に書いてくれ。細かいとこはいいから。」

「細かい……」

「いや、お任せします。」

 

 と、トイレの前に逃げてきた俺だが、古泉にノート取られちゃったし、数学も後回しか。

 その時、チャイムが鳴った。みくるちゃんだ!


「どうしたの?」

「あ、いや、別に。」

「水まんじゅう買ってきたよ~。」

「おお、程よく冷えてるなぁ。」

「まだ、テスト勉強やってるんだね~。」

 俺の部屋にやっと五人そろった。

 幸福なことだ、今は。

 実態は、テスト勉強をしているはずの俺達だが、長門はハルヒに取られたし、古泉は、ぶつぶつ何か一人で呟いている。

「それで、7チャンネルのカラオケ番組にチャンネルを変えるわね。たぶん、今回特番だから、歌い終わって切りのいいところで、テスト用に教科書を読み始めると思うんだけど。そのまえに、ジャージのゴムをパンとやる癖があるから、ゆるんでステテコがみ……」

「キャハハハハハ。なに、あの先生、ステテコはいてたっけ~。」

「私も少し驚いているわ。残暑もあるのに。」


 古泉は、キョンのノートに、自分のノートを写す。

 俺にとっては、これがベストな回答だな。

「おい、長門~。休憩とったら、現代文頼むな~。」




 とりあえず、おしまい。つづくかも。

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