涼宮ハルヒの盗掘

稲兎谷ぴょん

涼宮ハルヒの盗掘

「はじめまして。転校生の涼宮ハルヒです。ただの人間には興味ありません、未来人、宇宙人、超能力者・・・」

「あのな、ハルヒよ。」担任の先生が、ハルヒの自己紹介に割り込んできた。「もう、3年生の学校も後期だ。うちは進学校だとは、お世辞にも言えないのだが、今この時期、誰もが受験に躍起になっているのだ。クラブ活動も、さすがに3年生は中止。進学者も、これから就職活動をするやつもいる。だから、……。」

「はいはい、普通の教師なら皆同じことを言うわ。それは正しいと思うしね。」

 と、担任を肯定しているのだが、何か余裕がある。

「じゃあ、迷惑かけなきゃなにしてもいいってわけでしょう。」

 堂々と言い切るハルヒに、担任が驚愕した。

「ま、まあ、教室では大人しくしていてくれ。」

「わかればいいのよ。自由にしていいわけね。」

「受験生には、ちゃんと配慮してな。」

「そんな人に興味ありませんから。」

 そういうと、「私の席ってどこ~」と、教室に空席を探すハルヒであった。

 そして、手近なところを見つけ、隣を見ると、

「えっ、ジョン・スミス?」

「なんだ、キョン? 知り合いなのか?」

 担任が聞いた。

「ジョン・スミス? はて? 記憶にないと思うんですが……。」

「そうか。」

 そして、ハルヒが小声でキョンに話しかける。

「うまくかわしたわね。認めたくないけど、キョンにしてはさすがの芝居だわ。お昼に、屋上で待ってなさい。全部わかってるから。」



昼、屋上でキョンがハルヒを待っていると、クラスメイトの古泉と長門を連れてハルヒが来た。

「おい、ハルヒ! いい加減にしろ! 受験があやふやな俺はともかく、そいつらは学年ナンバー1,2なんだぞ!!」

「だからじゃないの。古泉君は、どうせ家で帝王学の勉強でしょう。長門ちゃんには、国会図書館の方がおすすめ。誰にも、迷惑かけないどころか、二人が競うこともないのに、噂ばかり先行して変な噂立てられたらどうするのよ。私は善意で動いているわ。」

「じゃあ、俺は?」

「キョンはちょっと迷惑かかるくらいでちょうどいいわ。」

「なんだよそれ。」

「人間扱いも難しいのに……。まあ、いいわ。みんなと同じく接してあげる。」

「で、人数集めてどうしようっていうんだ?」

 そこで、屋上のドアが開いた。

「パンと~瓶牛乳を~お持ちしました~。」

「みくるちゃんだ。」

「思い出した?ジョン・スミス!」

「え、てことは、そういう展開?」

「そんなわけないでしょ。とりあえず、結成祝いよ!SOS団の!」

「そう、でしたか。」と、古泉の記憶が戻る。

「いいと思う。」と、長門が口ごもる。

「わたしバイト中なんですけど~。」

「購買のアルバイトはやめなさい!」

「そんな~、むりです~。」

 と、ハルヒに泣きすがるくるみちゃんであった。

「わかった。活動は休日にしましょう。これで万事OK!」

 なんとか、いいメンツをそろえられたみたいね。

 満足げな涼宮ハルヒであった。


「あ、あの、俺は? ジョン・スミス。これでおしまいなの。あっちで盛り上がっちゃって。」


      おしまい

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