第2日 ヒウ
「ふー、助かりました」
ヒニチと女の子は岩のある広間で地べたに座って話をしている。
女の子はヒニチのほうにおへそを向けて頭を下げて礼をした。顔あげると、星のようなきれいな瞳がみえた。
あのあと、ヒニチは女の子の紐を解いてやることにしていた。女の子はグッと背伸びをして気持ちよさそうに声を上げている。八重歯がちらりと口元から覗く。服は縄文時代の女性の服と聞いて想像するような上下のつながった大きな布きれを着ていた。ここでの服は女ならこの少女の着ているもの、男ならヒニチが着ているもののようなのだろう。
「私はヒウと申します。本当に助かりました。命の恩人ですよ。えーと、お名前をお聞きしてよろしいでしょうか。」
この子はヒウというらしい。
「俺はヒニチだ。んなことより、なんで縛られてたんだよ。」
だれもが目の前で縛られている人を発見したら疑問に思うことをヒニチは口にした。ヒウはよろしくお願いしますときちんとした挨拶をして続ける。
「えーとですね、先ほど仲間たちと食べ物を探し歩いていたんです。今日は木の実も集まり、そのうえ珍しく猪の肉も手に入れられたんですよ。だから、森を抜けようとしていたところ、やばそうな男に襲撃されたんです。」
「へー、襲われた・・・」
ヒニチはボソッとつぶやいた。ヒウはそのまま続ける。
「私のような力のないようなやつは盗賊のような輩と出くわすことがよくあるんです。普段なら食べ物を置いていけばどんな輩も許してくれるのですがあいつは違って食べ物を渡したのですが、目もくれずに私たちのことを殺しにかかったんです。それで、驚いて、私たちは急いで逃げだしたのですが、振り切ることができませんでした。」
ヒウはヒニチの目を見てわかりやすいように身振り手振りしながら説明してくれている。
「そして物陰に隠れやり過ごしていたのですが、そこで仲間が全滅は何が何でも避けなければならないと言い出しまして。そして、男なら誰しも女に弱いという浅はかな発想から私を餌にする作戦を思いつきました。しかし、それを私が絶対いやだと拒んだのでここで縛られ、強制的に餌にされていたんです。」
ヒウは河豚のように口をふくらませ怒りをオブラートにして表現している。たしかに、少し同情する。囮ではなく餌。ヒウの犠牲は避けられないという言い方だ。すると、急にヒウは何か思い出したように手をたたいていう。
「そうだ!そんなことより、助けてくれたお礼にいいものあげますよ!」
「いいもの?」
(なにが出てくるのだろうか?)ヒニチは少しの興味をよせた。
「はい、そうです。今作るんでちょっと待ってもらえますか。」
(ん?つくる?どういうことだ)ヒニチはヒウの発言を不思議に思った。そして、そんなヒニチをよそにヒウは突然目をつむり、手のひらでお椀を作った。すると、黒い電気のようなものが手のひらの上で集まり始めた。そして、次のビシッと効果音を立てた瞬間には、手のひらに『SMOKE YELLOW』とかかれた煙幕弾が存在していた。ヒニチは目を丸くしヒウを見ている。
「ここでは危険な人がいっぱいいますからね。こういうのは持っていて損は・・・」
「なにがおこった!?」
ヒニチは驚きに遅れて声がでた。するとヒウが
「知らないんですか!ってことはここにきたばっかり!?」
と大きい声をあげた。この驚き用からしてここでは今起きたことは常識なのだろう。
「あーそうだよ。で、どうやったんだ?」
ヒニチはぶっきらぼうに言い、自分の持つ疑問をすぐになげかけた。
「えーと、ですね、簡単に言いますとここでは自分の持つ殺気を物質にかえることが可能なんです。今、私は私の持つ殺気を煙幕弾に変えたということです。」
「でも、それならやり方を教えてくれていれば俺でも・・・」
ヒニチはまたも質問する。そして、ヒウもそれに対して答えようとしたその瞬間、木の陰からしたパきっという音にヒニチは気が付いた。そして突如ヒニチはヒウにとびかかった。
「危ない!」
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