ワケありお客様
中央支部から一枚の紙が各地の国に届く、それはサリウスの国が独立したことを知らせる紙だった。
サリウスの国は元々、豪邸のみの国として知名度はそれなりにあったが貿易などが盛んではなく単なる自称国として名乗っていると思われていたが中央支部からの支援を断り独立国になるということはそれなりの金バルがあり、国としての備蓄もあることを意味していた。
各地の国はその備蓄とバルを奪うためにサリウスの国に目をつけた、独立国となれば中央支部もとい他の国から味方はない。陸の孤島と化した。
そんなサリウスは現在、客室にて一人の男性を目の前にしてコーヒーを飲んでいた。
「ーー実質的な烙印だな」
「ああそうだ、サバルスはどうする?俺と対峙するか?」
サリウスの目の前にいる男性それはバルチャー国を治めるサバルス王だった、バルチャー国は一定の物資の中央支部からの支援と全てにおいて毎年水準を保ち続けていた。年齢的にはサリウスより上でとあるワケありのお客でもあった。
「いや私は遠慮する。君達の国は中央支部に匹敵するほどの強さだからな」
「そうだろうな」
「ウール殿から話は聞いている。しかし君は争いを好まないだろ。どうして支援を拒否した理由は分かってる。元老会だろ」
「ああそうだ」
「そう言ったのか?」
「それに似たことを言っただけ」
「全く……それで武器は?」
「必要だ。それと新しいのが欲しい」
サバルスの国は平和な国で兵器なんてものは一切手をつけない、しかしそれは表面上、裏では唯一サリウスだけに武器を製造する国だった。
サバルスは新しいのが欲しいと聞いて顔色を変える。
「分かった。何がいい?」
「消音の武器と人を容易に殺せる武器」
「おいおい殺せる武器なんていくらでも造ってやるが、消音はなぜだ?」
「カザリが煩いとさ」
「煩いとなれば銃器は難しいだろうな、それに容易となると暗器系になるだろう。アストロ殿なら扱える武器になりそうだがハニーラ殿は難しいな」
「ハニーラは武器を使わないからな、それじゃあ武器の製造を頼む、カナリアに武器の受け取らせに行く、それとサバルスにもう一つ頼みたいことがある」
サリウスは懐から一枚の紙を差し出す、それを受け取るサバルスはペンを持ち書き始める。
「要件は?」
「中央支部の支援バルが多い主要国を調べてほしい」
「そんなのウールに調べさせればいいだろ」
「いやこれはサバルスにしか出来ない、元々支援バルを一部出資していただろ」
「ああそうだが何故私に?」
「信頼が最も高いからだ」
「ふむ……、まぁ確かに私と君の仲だ。しかしだ、いつ裏切るかも分からないぞ」
サバルスは貰った紙を書き終わり返す、その紙は小切手、依頼料としてサバルス本人がどのくらいのバルが欲しいか書いてもらったが返ってきた紙には『0』と書かれていた。
「いや必ずお前は裏切らない。それがこの小切手だ」
「やはり君には頭が上がらないものだ、それでは私は失礼する」
「感謝するよ、サバルス王」
笑うサリウス、それを見たサバルスは頭を下げ部屋から出て行き自国へと帰っていった。
サバルスが帰ったあと部屋にヘリルが入ってくる。
「ご主人様、ご質問よろしいでしょうか?」
「構わん、なんだ?」
「サバルス様はなぜいつも小切手には『0』と記載されるのでしょうか?」
「あ〜、ヘリル達には教えてなかったよな。これ見てみろ」
サリウスは渡して返ってきた『0』と書かれた小切手をヘリルに渡す。
「『0』ですね。それ以外の数字はありませんが……」
「俺やサバルスは裏取引では有名だ、他に何ヶ国とも裏取引してる。そこで安易で容易な裏取引の確認として小切手の裏に書いてもらってる」
「裏ですか……何も書いて、いえ右下に小さく文字が書かれています」
小切手の裏の右下に小さな文字で幾つかの国の名前が書かれていた。
「流石はサバルス王だ、元中央支部の連中だけある」
「この書かれた国の名前が支援バルの主要国ですか?」
「ああそうだ、あとキリアを呼べ」
「かしこまりました。ご主人様」
ヘリルは部屋を出てキリアを呼びに行く、そして部屋に入ってきたのはミニスカートのメイド服を着た女性キリアだった。
「キリア。頼みがある」
「何なりとご主人様」
「暗殺を頼みたい」
「サバルスからの新武器が届き次第、アストロと暗殺を頼みたい」
「新武器の実験ですね。暗殺対象は?」
「ヒリスト国の中央支部に繋がる人間を暗殺しろ」
「失礼ながらご主人様、現在中央支部に反する行動及び暗殺を含めた殺傷を行うと他の国からの目が確実に向くかと……」
「先手を打つ、何より俺が豪邸から出たくない」
「畏まりました。ご主人様、それでは武器が届き次第向かいます」
キリアは頭を下げ部屋を出て行く、サリウスも自室に戻り一息つく。
「支援バルが多い国がまさかの三つとは、しかもこの国共少々厄介だな、まぁでもやりがいはある」
小切手の裏に書かれた国の名前を覚え破りゴミ箱に捨てた。
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