薔薇の熾天使
明朝、叩き起こされるサリウス。
「ご主人様。起きてください」
「んにゃ?ーーおわっ!!」
シーツを引っペがされ転げ落ちるサリウス。
「ヘリルお前、朝だけ厳しいよな」
「すみませんご主人様。ですがウールからの報告から昨日のお客様が中央支部にお話したようです」
「はぁ…殺しとけばよかったか?」
「争いは好まない。と仰っていませんでしたか?」
「許可なしに、だ。おそらくだが中央支部は烙印しに来るだろうな」
「棘はご用意しますか?」
「そうだな」
「畏まりました。ご主人様」
サリウス・フリエア。この大豪邸に住む一国の王様。国民である民全てはメイドのみ、国としての領地はこの大豪邸とその敷地内のみ、それ以外の土地なんてない。
巨大な国の中央支部にバル金によってお金を得て国を大きくするのだがここサリウスの持つ国は極小の国で決して領地を広げることはしなかった。
「しかし、面倒臭いな〜。中央支部の奴らがまた五月蝿いんだよ」
「領地を広げてはどうですか?」
「いやそれこそ面倒臭い、色々と運営していかなきゃならねぇかな、だとしたら俺の豪邸のみでお前達さえ居れば十分だ」
「ありがたきお言葉、それでは中央支部の方々におもてなしの準備をさせていただきます」
「ああ、手厚くな」
「畏まりました。ご主人様」
ヘリルは歩みを止めご主人様であるサリウスを見送り、サリウスは朝食をとる。
その間にヘリルはとあるメイドを呼ぶ。
「数日後、中央支部の方々が来ますので手厚く歓迎の準備をお願いします。アリエル」
そして数日後、サリウスの敷地前には多くの鎧を着た兵士達が囲んでいた。
「おーおー、お客様だ。しかもご立派に中央騎士団に加え中央魔法支部までいるよ」
サリウスは自室の窓から見える兵士達を嘲笑いながらパンを食べつつ眺めてると部屋をノックして入ってくるヘリル。
「ご主人様。準備は整いました」
「そうか、カザリは?」
「地下で寝てもらっています」
「オッケー、そんじゃヘリル。ついてこい」
「畏まりました。ご主人様」
食べかけのパンを皿の上に置いて自室を出るサリウス、そして豪邸から何も持たずに出て敷地内を歩き、正門前に行く。
「やぁ、久しぶりだね。中央支部の方々」
今にも攻められるにも関わらず動じないサリウス、そして中央支部の騎士団をかき分け前に出てきたのは一人の老人だった。
「サリウス。金《バル》についてだが……」
「嫌だ」
「なに?」
「中央支部からの支援はもういらない。この国は完全なる独立国として生きていく」
「独立国だと!?」
中央支部の支援を断る意味は国のみが自給自足に加え他の国と敵対を意味していた。
共存を元に中央支部と各地の国はそれぞれが支え合う立場だがサリウスは共存を拒否を続けていた。
「さぁ帰った帰った。俺は争いを好まない。別に独立国だからといって攻める気はない、それでいいだろ」
「分かった。貴様がそう決めたことならこちらとて容赦はしない。今ここで貴様の国を滅ぼす」
「めんどくせぇな、ヘリル」
「はい。ご主人様」
「棘の準備だ」
「畏まりました。アリエル」
ヘリルの耳につけたインカムで数日前に話していたメイドの名前を呼ぶ。
「は〜〜い。ガトリング砲を携えてアリエルちゃん登場!!お客様〜〜、沢山踊ってくださいませ」
すると大声で返事をして豪邸の屋根に立っている金髪メイドがいた、そのメイドこそがアリエル。そしてその手にはガトリング砲を持っていた。
「多少穴は空くかもしれねぇがお前が始めた事だ、中央支部の元老会 マグルス」
「若造が……、後悔しても知らんぞ」
「ああ、お前達がな」
互いに笑みを浮かべ同時に離れるとアリエルが見計らったかのようにトリガーを引く。
砲塔が回転を始め雨のように銃弾が放たれる。しかし騎士団の背後にいた魔法支部が防御壁を張り銃弾を弾く。
「ヘリル。このあとはウールに中央支部の監視を一任させろ。付き添いに二人までなら付けてもいい。あとはアリエルにガトリングの薬莢は自分で拾って掃除させとけ、そんなもんか。このあとは中庭の手入れはハール、床掃除にはヤイナ、そして……」
サリウスは何事も無かったかのように色々とヘリルに指示を出しながら自室に戻る、まだ外は銃声が鳴り止まなかった。
自室に戻るとサリウスは食べかけのパンを咥えて窓際に座り外を見る。
「元老会の野郎……」
一足先に撤退の準備をしている老人 マグルスを見つけ睨むと視線に気がついたのかマグルスもサリウスを睨む、そしてマグルスは徹底の合図を送り騎士団は徹底して行った。
「お掃除完了〜〜。アリエルちゃん大勝利〜〜」
アリエルは屋根の上でぴょんぴょん跳ねて喜んでいる途中にヘリルがやって来る。
「アリエル。お掃除は地面に落ちた薬莢をお掃除してから言ってください。そしてその後は武器の手入れと屋敷のお掃除をお願いします」
「はい!メイド長」
「それでは」
ヘリルは消え、アリエルはガトリング砲を持ったまま三階はあるだろう豪邸の屋根から飛び降りる。
「よっと、わっとと……、ふぅ。いい天気だ」
晴天の空を見上げるアリエル、そして大きく深呼吸したあと屋敷に戻りお掃除を始めた。
その夜、サリウスが食事をする隣でアリエルがパンケーキを食べる。アリエルは騎士団を退けた褒美として願い事を一つサリウスに言うことが可能でアリエルはパンケーキが食べたいと言いサリウスの隣で美味しく食べている。
「アリエル。騎士団の防御はどのくらいだったか報告しろ」
「ん〜〜美味しい。はい、騎士団の魔法支部は数年前と比べ魔法詠唱無しで防御を張りました、魔力は相当だと思われます。詠唱無しは魔力による防御や攻撃は半減するはずなんですが一切半減してませんでした」
「魔法詠唱無しとは随分と進んだようだな。まぁでも大した問題ではないな」
サリウスは食事の手を止め考え事を始めると扉が開きパジャマ姿の女の子が大きなぬいぐるみを引きずりながら入ってくる。
「ん〜〜〜……おはようございます。ご主人様」
「カザリ、おはよう」
「んぐっ!?カザリ様が起きてきた、超貴重……」
パジャマ姿の女の子はカザリと呼ばれこれでも一応この豪邸のメイドだった。
「ご主人様〜〜、なんかお外が五月蝿かったですよ〜〜」
「悪いな、ちょっとした来客だったんだ」
「うぅ〜〜、アリエル〜〜もう少しあのどデカい銃の音どうにかなんないの〜〜」
「あ〜ごめんなさい。あれそういうものでして出来ないんです」
「う〜〜〜〜〜、もう眠りを妨げないでね〜〜」
カザリは文句だけ言うとまたぬいぐるみを引きずって出て行く。
「地下室に入れても聞こえていたのかよ」
苦笑いするサリウス。それはカザリは他のメイドとは違い異常性があるため基本的には起こさないようにしている。その異常性はサリウス自身も一応気をつけているほど強力なものだった。
「アリエル。片付けを頼んだ」
「かしこまりました。ご主人様」
サリウスは食事を残したまま自室に戻り椅子に腰掛ける。
「さて、どうしたものか……」
考え始めようとした時、目の前の黒電話が鳴り受話器を取る。
「ヘリルか、どうした?」
「はい。お客様からお電話です」
「誰だ?」
「バルチャー国のサバルス様です」
「繋げ」
「かしこまりました」
一度電話が切れるとまた繋がる、すると受話器の向こうから聞きなれた声が聞こえる。
「久しぶりだな、サバルス。ああそうだ……、そこで少しばかり話さないか?、いやそれはいい、あとは今後についてだが…………うんそうだな。じゃあ待ってる」
電話を切り受話器を置く、サリウスは先程まで考えようとしていた事が真っ先に予想通りに進み笑った。
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