薔薇には棘があるがメイドにはそれ以上の棘が存在する

水無月 深夜

薔薇のメイド

 とある異世界、現実より程遠い異世界。この異世界はバルが全て、バルさえあれば何でも出来る。そしてそんな世界の片隅にとある大富豪が小さな国を統治していた。

 ウルフサリウス。ちっぽけな国、若い大富豪であるサリウス・フリエアが大豪邸を持ち続けるがそれが国としての領地。他の国にはある土地というものは大豪邸とその敷地内そのものしかない、民という国民は大豪邸に住む数十人のメイドだけ、それ以外は何もない。

 しかし、なぜ極小である国が統治し続けられるのには国民であるメイド達にルールがあった。


「ご主人様。お客様がお見えです」

「……そうか」


 絶対不変のルール。


「てめぇ何処の国のもんだよ」

「ひ、ひぃ…」


 一つ。許可がない限り人に危害を加えてはならない。


「さっさと言わねぇと殺すぞゴラァ」

「わ、私はただ…」


 一つ。許可がない限り人を殺めてはならない。


「……何事だ?キリア」

「ご主人様!!あ、いえお客様が……」

「そうか、大事なお客様だ。丁寧にもてなせ」

「申し訳ございません。ご主人様」


 一つ。主の命令は絶対。


「……ふむ、で?何用だ?」

「す、すみません…。サリウス殿。少しだけ武器輸入の件について……」

「俺は争いなんて好まない」

「ですがサリウス殿の国は小さ過ぎる。いつバルを落とされるか分かりませんよ」


 サリウスの国はあまりにも小さ過ぎる国、もはや国とは呼べない。


「俺がとでも?」

「そこまでは言っていません。ただこのままでは中央支部からの烙印を押されかねないですよ、ここは私の国から支援を送ります」


 中央支部。巨大な国にしてバルが最も流通し生まれ様々な国に支援している場所、そこからの支援が途切れてしまったら国は烙印を押され生きていくことさえ困難となり実質『』を意味していた。


「だからそのための武器輸入か?」

「はい。私共の武器は最高級です。中央支部でもそれなりの支持はあります」

「ふむ…話は聞いている。たしかに悪くない」

「なら……」

「だが、俺は争いは好まない。それに貴様如きの支援を得た所で貴様はどうせ中央支部に報告しさらに武器輸入をする。そうすることによって貴様の国のバルは跳ね上がる。武器商人というのは楽な仕事だよなぁ?」

「うぐっ……」


 中央支部だけではなく武器輸入、物資輸入によってさらに大きな国にしようとする国もある。国によっては争いを起こして国さえも消してそのバルを吸収しようとする。


「まぁでも武器なんてすぐに手に入る。それに俺達の国は小さくても巨大だ。中央支部より巨大」

「な、なぜそう言い切れるのですか?」

「知ってるか?メイド服にはがあるってのを…」

「は、はぁ?一体何を…」


 サリウスの横にいたロングスカートのメイド服の女性が机の上に足を乗せ裾を上げると太もも辺りにホルスターが付けられて銃がそこにはあった。


「そんなところに…しかしそんなちっぽけな銃なんて…」

「誰も一人だけとは言ってねぇよ」

「ーーッ!」


 先程までお客様を脅していたメイドがナイフを首元に向けていた。いつ出したのかさえ分からない。わざと気づかせたのか分からないほど気づいた時にはあった。


「あんまり俺の国民を舐めるなよ…」


 サリウスは立ち去ると横にいたメイドも去って行きお客様は追い出される。


「ご主人様。いいのですか、を見せてしまっても?」

「構わねぇよ、それよりヘリル最近太ったか?足回りが少し大きくなった気がするが…」

「ほんの少しだけ食事を多めに…」

「そうか、程々にな」

「はい……」


 一つ。ご主人様に隠し事はしてはならない。

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