12・時の過ぎゆくままに
「おのれえええ。おのれえええ。もう少しだったのにいいい」
黒死蝶が羽根を羽ばたかせるたびに無数の普通サイズの蝶たちが朝矢へと向かって襲い掛かる。朝矢は握っていた弓矢をいったん消すと次に刀を出す。そのまま、蝶たちを切り裂いて消していく。
蝶は小さい。上からう落ちてくる葉っぱをきりさくようなものだ。
そう考えたときに、思い出されることは落ち葉切りをした経験だ。
しかもカッターナイフで落ちてくる葉っぱを二つに切るゲームをすると言い出した兄の無邪気な笑顔を思い出される。もちろん、無理な話だった。
朝矢のもつカッターが葉っぱが落ちる前に刺さることは一度もなかったのだ。その横で兄は何枚もの落ち葉を切り裂いていくのが見えた。「俺ってすげーだろう?」と得意げに笑う姿が過る。
「今の俺なら、兄貴には勝てるぞ」
朝矢は思わず笑みをこぼす。
襲い来る蝶たちをすべて切り裂いていった。
「なに?」
さすがの巨大蝶も隠せないでいる様子だ。
「ならば。これならどうだ」
蝶が羽ばたく。すると、先ほどよりも数倍。視界すべてを黒く染めるような大量の蝶たちが襲い掛かってきたのだ。
「くそっ、それはねえだろうが! 俺は結界術とか苦手なんだよ」
朝矢が悪態をついた。
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