6・揺籃歌
巨大蛾は再び羽根を広げて飛び立つと成都たちに突進してくる。
「うわあああ」
成都たちはギリギリで交わした。
「早いわね」
「とにかく結界はるわよ。見境いなくなっている」
桜花のいうように巨大蛾はゾンビのようになった人たちにも襲い掛かっているのだ。その蛾に捕まった人たちが次々と血を流して倒れていく。ただ唯一致命傷にはなっていないようだが、死を迎えるまでにさほど時間はかからないだろう。
「でも桜花。私たちの結界ではどこまで守れるかわからないわよ」
「やるだけのことをやるのよ。シゲ。お願い」
「了解」
成都は襲い来る巨大蛾に向かって槍を投げつける。しかし、難なく交わされてしまった。
「あらら。ってなるわけないやろうがああああ。我が命じる槍よ。かの者を追跡せよ。多槍変化」
成都が叫ぶと、巨大蛾を通り過ぎていき、空高く舞い上がった槍が無数の分身していき、巨大蛾に向かって襲い掛かる。巨大蛾はさける暇もなく無数のいくつかの槍が背中に刺さった。
そのまま巨大蛾が降下していき地面に激突する。
巨大蛾はすぐに立ち上がろうとする。
桜花は巨大蛾を取り囲むかのようにカードを投げて地面にさしていった。
「我の命じるところとなり、かの者を閉じろ。結・門・印」
桜花が叫ぶとカードが光始めカードかカードか光の線でつながっていく。
たちまち巨大蛾をドームのように取り囲む。
それを見届けた桜花が歌いだした。
歌は童謡。
喚き散らしていた巨大蛾が徐々に動きをとめ、そのまま静かになっていった。
「どうにかうまくいったな」
成都がほっとしたようにいう。
「これはね。でも、この人たちまではできないわよ。いくらなんでも愛美が歌いつづけるのはきついわ。なるべく早くおわらせないと」
桜花の言う通り、愛美は歌い続けていた。とまることもなく歌いづつけ、その視線は眠りについたはずの巨大蛾のほうへと注がれている。
これはそういう能力だった。
桜花はただ檻を作り出して、巨大蛾を押し込め、愛美は子守歌を奏でている。しかし、子守歌は通常の子守歌のように歌っていたらいつの間にか眠りにつく幼児といった効果があるものではない。
歌い続けている間だけ眠りにつかせることができるものだった。
歌で記憶を操作することは歌がなくなつても記憶操作効果をえることが可能だが、眠りにつかせる術は愛美にとって苦手とするジャンルだったからだ。
うまくその巨大蛾自体が眠りについてくれればいいのだが、強制睡眠ではうまくいった試しはない。
どうか眠ってくれと祈るばかりだ。
「有川。ここは私たちがなんとかするから」
「ああ。わかっている」
ゾンビたちを倒していた朝矢がさきにステージへ向かっていった尚孝を追いかけて走り出した。
ゾンビが再び起き上がる。
「きりがないなあ」
「まあ大丈夫よ。もう芦屋さんがステージにたどり着いているもの」
桜花の視線の先には尚孝が襲い来るゾンビを倒しながら巨大黒死蝶の中へ入っていく姿が見えた。
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