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「へー、はいりふらん、はいえてふらあ」
へえ、第2グラウンド始めてくるわと、竹内に言った。
俺の通う
サッカー部、ラグビー部、陸上部などが使う第1グラウンド。硬式テニス部、軟式テニス部、ダンスサークルなどが使う第2グラウンド。この二つは「いちグラ」「にグラ」と呼ばれている。そして、野球部が使う野球場の三つだ。
三つもあるなんて恵まれているように思えるが、広さ的には、第2グラウンドは、第1グラウンドの半分もない。
ずっとサッカー部だった俺にとって、第1グラウンドはなじみ深いが、第2グラウンドは未知の世界である。体育の授業でも、まず使われないから、外から見たことはあっても、一度も足を踏み入れたことのない秘境だった。
「そうだよね。肺に何か入ってくるよね。たぶん空気じゃないかな?」
と竹内は返してきた。なんでそうなる? 俺は決して「肺に何か入ってくるなあ」などとは言っていない。
「いや、第2グラウンド初めてだって言ったんだろ」
汲み取って、助け船を出してくれたのは背の高いメガネ……「こや」だった。あまり感情のこもっていない、ぼそぼそとしたしゃべり方だったが、おそらくそれがこいつのしゃべり方なのだろう。
俺は、コクコク頷く。
「私、
俺を引っ張っていたネットの紐を竹内に託し、松林先輩は髪とスカートをふぁさふぁさと揺らしながら走ってどこかに消えた。
竹内の誘導でさらに歩き、金網で区切られたテニス部の練習場を通り過ぎ、さらに、部室棟の横を過ぎた先に、それはあった。
鉄の棒で組まれた枠。そこからぶら下がる二本のワイヤー。その先端に橋渡されるように付けられた黒い板。
ブランコである。
俺は息を呑んだ。
公園によくある遊具。しかし、それとは明らかに違う。初めて見る、本格的な、競技用のブランコ。
……なんだこの偉容は……。思わず、呆然としてしまう。
「見たことないでしょ? 俺も、初めて見たときはそんなリアクションだった」
と、竹内が笑いかける。
俺がやってきた、もとい、連行されてきたこの場所こそ、
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