第0.75章 がむしゃらな日々

第43話 - びんびん - 

 斡旋を請け負ったシュルーサー家の掃除の日にちが迫っていた。斡旋所にて目新しそうな貴族の依頼はない。


 空き家へ行って荷物をまとめた。今日でこの元エスティナ家の空き家を後にする。サボテン他を持ち、自宅へ戻った。ついでにエル宅に行き銃弾の補給も頼む。そして教会へも寄る。


・・・


 その後、詰め所へ出勤。いきなり夜勤をやらされた。というより、当分現場へは出してもらえないだろう。暇だ。何をする?


1.徘徊する

2.フローラ似のエロ本で抜く。

3.牢のエスティナにいたずらする。

4.ユミ=マーガリンのマネをする。


・・・


 ――4? 糸でスパパパってか? あんなのはトラウマだ。ヤバすぎる。金輪際関わりたくない。2もダメだ。職場で抜くほどチャレンジャーじゃない。そもそもここに持ってきているわけがない。1は嫌だ。さすがにこの歳でやりたくない。


 3だ。


 地下牢へ行く。見張りがいた。


「なんだガード? 上と変わってくれるのか?」


「なあに。ちょっと動けないエスティナを回しちまおうと思ってな」


 手に持つものをプラプラ見せる。


「なに!? 貴様! ……よくそんな名案を!」


 カシャ キィ


 ドアを開け2人で入る。エスティナが俯いていた。


 カチャ カチャ 


「はいはいー、エスティナちゃーん、お注射しましょうねー」


 何日もまったく食事を採らないエスティナに栄養剤を投与する。相変わらず目に全く精気がない。


「おーい!」


 肩をボンボン叩く。


「ダメだこりゃ」


 教会の休職届けを持ってきたので無理やり母指に朱肉を付けて押す。毛布をかけてやって退室した。


・・・


 翌日は式典が行われていた。功績を挙げた者を表彰するものだ。武功のものでガード達衛兵も整列していた。来賓席には地面まで引きずった和服を着た朝姫の姿もある。議員の老人が壇上に上がっていた。


「本日は、魔人ネオフリックス討伐の功績を称え……」


 ――魔人を討伐だと? 一体だれが?


 前線の砦付近の領地で長年やっていた、いざこざだ。アレクサンデル将軍も対応に苦慮していた。


「大輔=シュルーサー、及びその一行、壇上へ」


 4名ほどが壇上へ上がる。内1人は配偶者のマリーヌだ。


 !


「お、おい」


 衛兵は微動だにできないが、小さな声でセスと反応する。大輔が魔人を討伐したとのことだ。


「栄光を称え、勇者の称号を与える」


・・・


 式典が終わり、詰め所で同僚と昼飯の弁当を食っていた。


「大輔が勇者だと? ドウターのクセに生意気な」


 ――しかし、シュルーサー。掃除の依頼もシュルーサーだったな。


「あいつらは役立つ異能保有者も多い。恵まれた能力持ってんだろうな」


「いや……」

 

 少なくとも、ガードとセスはこの前に拳の殴り合いだけで負けた。基本能力も備わっているということだ。


「勇者の名は伊達じゃないってか」


 実質、魔王不在の魔界を統治していると言っても過言ではない、頭文字を取ってFAANG、魔王が居なくなってから、牙のように鋭く勢力を拡大させた異名で呼ばれる魔人5人衆。


 魔人フェリシア

 魔人アポーレ

 魔人アモゾ

 魔人ネオフリックス

 魔人グーグレー


 ――その中でも最弱……なんてことはなく、超強力な魔人だ。それを討伐してしまうなど。まあ、噂でしか知らないがな。


 この5名は誰もが次期魔王を狙っている。エルに声をかけていた者もいた。魔人は通常の方法ではダメージを与えることすら困難という。


 少なくとも大輔はその手段を持っているというわけだ。


 討伐、とは言っていたが、せいぜい局地戦での勝利だろう。本当に倒しているなら魔界の勢力図が変わってしまう。そんなニュースはない。単に退けただけで、政治の人気取りに利用した可能性もある。


・・・


「ドウターの勇者、大輔を討伐しよう。それがこの物語の趣旨のはずだ」


「……ガードくん、何ぶつぶつ言ってるの?」


 エルの家に来ていた。銃弾が出来たらしい。人間に友好的な一級神の加護のおかげで、エルへの恐怖心はほどんど消えていた。


「はい。追加の銃弾、属性一式だよ」


「サンキュー、今度は変なアレンジしてないだろな」


「し、しないよ?」


 ――またこのセリフか。イマイチ信用ならない。研究者ってのは、何かいちいち自己アレンジを入れなきゃ気が済まない連中だ。


「よし、これで一緒に勇者大輔をぶっ殺そうぜ」


「え? この前表彰されてた人? んー、何も悪い事してないよ。むしろ悪い魔人をやっつけてくれたみたいだよ」


「あ、それよりもコレも出来たよ」


 強化丸薬だ。オッドが使ってみたものを試験的に導入したくなった。


「よし、ためしに使ってみるぞ」


 基本作用と副作用、それが実証できれば、実戦投入だ。


 ガリ


 ――!


「おお! キタキタキタキタキタァー!  ……ア?」


 なぜかチ○コだけびんびんに勃起していた。猛烈にテントが張っている。


「ひゃ!?」


「な、なんだ? 精力増強剤なんて頼んでないぞ?」


 とくに筋力等のパワーが上がった感じもない。失敗作だ。ズボンを脱いで確認する。普段よりやや肥大化している。ような気もする。


「ガ、ガードくん、ここで脱がないでよ。見えてるよぉ」


 手で顔を覆うエルだが指の間はスキマだらけになっている。


「ガタガタ言うな。昔風呂で散々見てるだろ。ていうかお前が作ったんだぞ。責任とって慰めろ」


「うう……」


「中和剤は?」


「つ、作ってないよ?」


「……」


 仕方ないのでそのまま帰宅した。一応完成品分は全て貰った。


・・・


 夜になってもまだガードはびんびんだった。


「くそっ、フローラ様似のエロ本で3発抜いても収まらん。やはり俺にはアスティ様しか――」


・・・


 翌日になってもまだガードはびんびんだった。


「マジか? いつ収まるんだこれ。ていうかもう出勤だぞ」


 ――だめだ。股間当てのレガースからはみ出てしまう。どうするんだ? テント張ったまま出勤するか? いやだめだ。レガース未着用だと罰則だ。


・・・


『すみません、本日は遅刻させてください』


『どうしたガード、お前にしては珍しいな?』


『異常ありました』


 自宅の魔通信にて職場へ連絡を入れて、朝姫の元へ向かった。病院へ行くには恥ずかしく、治療の心得のありそうなエスティナは喪失状態、もとい正常でも切り落とされかねないので、頼れる知人は朝姫くらいだ。案の定、庭園付近をふらふらしているのを発見したので即刻向かう。


「頼みがある。治してくれ」


 テントを外して見せる。


「……断る。禍々しすぎる」


 露骨に嫌な顔をされた。


「そういわずに頼むよ。ここだとじきにフローラ様も通る。早く」


「なぜフローラに見せれんで私に見せれるのか甚だ疑問じゃ」


「同じの1個やるから。な?」


「む? ……本当じゃな?」


 ――え?


 股間を解呪してもらった。正常にもどった。丸薬を1つ譲った。


・・・


 ――な に に 使 う 気 だ ア イ ツ


気を取り直して出勤した。

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