第37話 - 黒幕? -

 本日ガードは城へ向かった。入城前にふらふら庭園を歩いていく朝姫を発見する。やや時間もあったため適当に後ろから話しかけてみた。


「もう気づいているぞ。お前が黒幕だってな」


 朝姫は振り向かず、歩みだけ止める。


「……どうしてわかった?」


 ――え?


「お前の失ったエロ本、たしかに私の仕業じゃ」


 ――な、なん……だと?


 一瞬思考が追いつかなかった。


 ――なぜだ? なぜコイツが俺のエロ本を狙う? あれは親が処分したはず。関連性すら分からない。


 だがそれよりも――


「……返して、もらおうか?」


「……断る、と言ったら?」


 武器を構える。対して朝姫もいつしかのアンナ戦のように、鉄扇を構え前傾姿勢となる。


「……」


「何をやっているのですか?」


 農具を持ったフローラが非常に冷たい視線をこちらに向けていた。言えるはずもなかった。代わりにフローラ似のエロ本で慰めているなんて。


「……探し物は見つかるじゃろう。どんな形かは知らぬがな」


 ――星詠みだかでみやがったのか。暇なくせに油断もスキも無い女だ。


 じゃあの、とまた去っていく。


「すみません、宰相に面会希望です」


「分かりました、着替えて向かいます。適当に城内でお待ちください」


・・・


「ん?」


 城内のベンチで待っているといくつもの資料を抱えた司書のカーリが通り掛かった。


「先日はどうも。手に入れたものはどのようにお使いに?」


 軽口でけん制してみる。


「カベヤマ一等兵、いつ私と親しくなった?」


 一言でそのまま去っていく。


 ――まあ、そんなものだろう。逆にぶっちゃけられても反応に困る。


「お待たせしました。父が執務室に入ったのでどうぞ」


 コンコン


 フローラと入室する。


「そう何度も来られても困る。カベヤマ、お前はそもそも、宰相と頻繁に面会できる身分ではない。フローラ、なぜ入れた?」


 初手から手痛い叱責が飛んでくる。責めはフローラにまで及ぶ。だがこの人のこれにももう慣れた。本題から言え、くだらない事を言うな、ということだ。


「では単刀直入にお伺いします。汚染異魂、というものをご存じでありますか?」


 !


 ブオンッ!


 瞬間、宰相が手をかざし、魔法を撃つ。


「ち、父上!?」


 部屋全体に結界を張ったようだ。外界との交通の一切を遮断する。


「……カベヤマ、説明せよ。どこで知った? それは、国家一級機密だ」


・・・


 主に空き地で見た話しを宰相に話す。フローラも知らなかったようだ。さすがに口元を押さえ、驚きを隠せていない。


「カベヤマ、そしてフローラ。汚染異魂の話、口外を一切禁ずる。調査も許さぬ。何もするな。破った場合、刑罰に処する」


 フローラにまで問答無用で釘を刺す。相当のようだ。万が一情報を得てしまった場合は即報告しろと言われ、部屋を追い出される。フローラと廊下へ出る。


「ガ、ガードさん、さすがに驚きました」


「ええ。しかし宰相も少しひどくありませんか? 何もするな、情報だけ寄こせなんて」


「……ああなった父は頑固です、いえ、元々頑固ですが」


 ちょっとフローラと似ているところが分かってしまったガードだった。

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